2020年09月09日(水曜日) 18:45 地域・まち

私財で障害者グループホーム開設 ~ その想いは?

「神戸市北区にやってきました。後ろに見えるのが神戸電鉄の西鈴蘭台駅です。

まさに一等地に、先月ある施設がオープンしました」

こちらは、障害者のグループホーム「フルール西鈴蘭台」です。
「ただいまー」
夕方、入居者たちが仕事から帰ってきました。

グループホームとは、障害者などがスタッフと共同生活を行う場所です。

「こっち少ない?」「いいよ」
こちらでは軽度の知的障害のある女性5人が暮らし、運営を社会福祉法人「新緑福祉会」が行っています。

「いただきます」
「お食事はどうですか?」
「めちゃくちゃおいしくて、たまんなくてしょうがない」
「だからどうしてもいっぱい食べちゃう」 

「自由な所」「長風呂しても叱られない」「テレビ見てる」

グループホーム「フルール西鈴蘭台」を作った、金沢勝治さんです。

「子供に寄り添うというのは覚悟と使命感。退職前からグループホームをしてみたいと」

金沢さんの娘の仁美さんは重度の知的障害があり、自宅から神戸しあわせの村にある通所施設に通っています。
金沢さんがグループホームを作ったきっかけとなったのは娘の仁美さんでした。

「これをさせてあげたい、あれも学ばせたい、色々な思いがあるが、
本当は色々な事を学ばせてあげたいけど、それがこういう形になってできないから、その代わり親として何かをしてあげたい」

金沢さんのグループホームは軽度の知的障害が対象のため、娘さんは対象外ですが、同じ境遇の親のため、私財を提供。
そこには子育ての支えとなった、娘さんの同級生の親たちの存在でした。

「3歳のころかな、丸山学園という所行っていたんですが…
普通だったら落ち込むような事があっても、話さなくても分かってくれる、共感できる仲間、そういう方がたくさんいた。
おかげで支えられたし、その時から親御さんたちで将来力を合わせて何かしたいなと」

グループホームは障害のある子を持つ親にとって、親なき後を託す重要な場所であるにも関わらず全国的に数が不足しています。
神戸市には現在810人分のグループホームがあり、今 年度末までに850人分設置が目標ですが、達成は難しいのが現状です。

神戸市福祉局障害福祉課長・星島課長:「グループホームに住みたい方がまだまだたくさんいらっしゃるので、
さらに増やしていく必要があると考えています。
また障害者の方が住み慣れた地域に住んでいいただくことを後押しすることがも必要だと思います」

設置が進まない理由について、運営する社会福祉法人・新緑福祉会の正心理事は、
「安心な体制を24時間保つための人を確保していくのが非常に難しい」
「グループホーム、障害者という冠だけで反対されたり、理解が非常に困難だという事例をたくさん聞きます」

地域の理解を得るために、金沢さんはある行動に出ました。

「こちら私のぎゃらりーカフェです」
「えーっ、ギャラリー?」
なんと、一念発起し、カフェを立ち上げた金沢さん。

カフェを地域の交流拠点とし、自分を知ってもらうため公務員からマスターに転身。

「何とも別世界ですね」
ギャラリーで障害者たちの作品を展示。現在は「森田整さんのスウェーデン刺繍展」が9月末まで開かれています。
障害を理解してもらう事に取り組みました。

「道で会っても声掛けしてもらえるし、娘の姿を見たら声を掛けてもらえる」
「出会いが1番」

そうして5年後、グループホーム設置に向け、近隣の家を説得。

「両手をあげて賛成のという方もいましたが、どんな方が?なぜここに?というリアクションの方もいらっしゃいました」
「そこはまた丁寧な形で自分の娘の事も話をさせてもらった。あ、あそこのお店の方だったんですね、という事でご理解を得る事ができました」 

物件は条件に合うものを7年探し購入。
築37年の建物をリフォーム。広~い敷地はなんと105坪で、南向き。
1枚ものの大きな扉を開けると。吹き抜けの玄関がお出迎え。
2階からサンサンと光が差し込みます。
そして…日当たりのいいリビング。

窓の外には、大きなお庭が。
個室は5つ。ベランダがついた部屋まであります。

「ここに至るまで色々な方の出会いがあって助けていただき、皆さんのおかげでここに至った。感謝しかありません」

障害があってもなくても、住み慣れた地域で、笑顔で暮らせる。
それが当たり前の世の中に。
不足するグループホーム設置に向け、いま以上の、地域の理解や行政の支援が求められます。

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