丹波駐在の松本将典カメラマンが
200年の伝統を持ちながら明治時代に途絶えた伝統工芸、丹波布の復活の取り組みを取材しました。
「今日は、丹波伝統工芸丹波布についてご紹介しましょう」
松本カメラマンが訪ねたのは丹波布伝承館。
200年の伝統を持ちながら明治に途絶えてしまった丹波布を復活させるために建てられた施設です。
ここで丹波織りの技術を指導する廣内良さんが案内してくれました。
「こちらが明治時代の古い丹波布になります。
つまみ糸と言われる絹の糸、特にこの布にはたくさん使われているんですが、絹の糸のおかげでふんわりしていたりちょっと光沢感があったりという、古い丹波布になっております」
丹波布の最大の特徴は、絹糸が織り込まれていることです。
この白く見えるところがつまみ糸と呼ばれる絹糸。
絹糸を織り込むことで淡い色合いと柔らかく上品な質感が生まれます。
「タータンや、チェック柄というか、現代的な感じがしますね」
「昔から丹波布にはいわゆる格子柄っていうものを織ってました」
200年以上も受け継がれてきた丹波布ですが、
産業の機械化や和服から洋服へ装いが変わったことなどで
明治の中頃に姿を消してしまいます。
復活のカギとなったのはこの丹波布を織った足立康子さんでした。
「もう昭和の初めくらいから丹波布復興の活動が起こってくるんですけれど、その当時でも、すでに丹波布を織っている人がほとんどいなくて
技術的にもほぼ残っていないような状態だったんです。
けれどもずっと丹波布を織り続けられていたのが足立康子先生、唯一人だったと思います」
1955年、昭和30年に設立された丹波布技術保存会は
平成に入って丹波布伝承館と姿を変え文字通り丹波織の技術を伝承しています。
廣内さんもここで学び、およそ10年前から指導員として技術を伝えています。
この日は今年、入校した生徒たちが糸を紡いでいました。
「これが『じんき』といって綿を巻いたものなんですけど、この綿が糸車を回す事によってよじりができて、ここから綿がずっと出ていってるわけなんです。
引っ張るとこの糸、切れると思います。これ、抜けちゃいますよね。
これも糸になってないので簡単に切れちゃうんです。
よりを入れると、細くなりますね。これで大丈夫です、ほら引っぱても」
「綿を細く伸ばして巻き取る作業。
見た目以上に難しく高度な技術が必要です」
伝承館で2年学び、技術者に認定された小笠原直子さんが機を織っていました。
なぜ丹波布を始めんですか?
「昔からタータンの生地が好きで、日本風というか古風な丹波布のタータンがあるんだということを知って」
「つまみ糸を入れておきます。この糸が入らないと丹波布とは言わないので」
足立さんが残した途切れかかった一本の糸は、丹波布を残したいという数多くの糸となり、それを紡いで今や丹波布の織り手は80人にまで増えました。
「一度途切れかけた糸を紡いでまた復活した丹波布。奥が深いです、そして難しいです。ところで廣内さんは全身デニムなんですね」
丹波伝承館:
糸紡ぎ体験 毎月第2土曜日
丹波布短期教室 9月18日~22日(締め切り8月15日)