【特集】脳梗塞から復帰 よみがえったピアニストの東北支援

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2011年の東日本大震災からあす3月11日で9年です。
3月10日、宮城県南三陸町に神戸から1台のピアノが到着。
贈ったのは、脳梗塞から復帰したピアニストでした。

2万人近くの死者・行方不明者が出た東日本大震災。
宮城県南三陸町は、津波で死者・行方不明者が1000人に迫る大きな被害を受けました。
復興計画は進んでいますが、震災前に1万7000人ほどだった人口は、およそ3割減って1万2000人ほどになっています。

東日本大震災の発生直後、西宮市の職員として南三陸町に派遣され、町長の秘書や広報担当を務めた谷口博章さん(49)。
実は谷口さんは、2017年に国際ピアノコンクールで1位になるなど、多くの受賞歴があるピアニスト。
2週間の派遣期間後の最終日、谷口さんは避難所となった2カ所の中学校でミニコンサートを開きました。
被災した人たちは、優しいピアノの音色に聞き入りました。
子どもたちからのお礼のメッセージは、大切な宝物。

(谷口博章さん)「本当はもっともっと残ってみんなを助けてあげたい気持ちがあったんですけど、きっと自分にはまだ出来ることはある、でもそれを投げ出して帰ってしまうと感じたので、涙が止まらなかったですね」

その後も休暇を取り、再び南三陸町で演奏を行ったり、関西でもチャリティーコンサートを開いたりして、支援を続けていました。

2019年、ある決断をした谷口さん。
20年近く愛用したグランドピアノとは、この日でお別れだといいます。

(谷口さん)「2018年の秋に急に脳梗塞にかかってしまって手術をすることになったんですけど、何とか大きなまひが残らず命をつなぐことができて、こうしてまたピアノが弾けるようになったんですけれども、病気もしてしまったので(長期間)神戸を離れるのをちょっと難しいなと思うので、自分の代わりにこのピアノに南三陸町に行ってほしいなという思いです」

音楽で被災者の心が少しでも癒されることを願って、思い出の詰まったピアノを送り出しました。

2020年1月のチャリティーコンサートでは、脳梗塞で倒れたことを感じさせない演奏で被災地支援を訴えました。
長男の暉芳さんも協力し、父親の活動を支えています。

ピアノは3月10日、南三陸町の戸倉保育所に届くよう手配。
谷口さんも3月中に保育所を訪れ、演奏会を開く予定でした。
しかし、演奏会は新型コロナウイルスの感染予防のため延期され、脳梗塞から復帰後は初めてとなる久々の訪問も断念することに。
さらに、岡山県で3月に予定されていたチャリティーコンサートも中止になってしまったということです。

(谷口さん)「ミニコンサートの延期をしてくれないかと連絡が入ったので、私も南三陸町の訪問を延期することにしました。戸倉保育所の所長さんからも、絶対に延期してやりたいですとメッセージいただいたので、私もその気持ちを強く持っています」

脳梗塞からピアニストとしてよみがえった谷口さん。
今回の試練もまた乗り越えて、南三陸町で演奏ができる日に備えます。

(谷口さん)「またピアノが弾けるように戻りたい、演奏できるようになりたいという強い思いでリハビリも頑張りまして、ほぼ元通りまで弾けるように戻りましたので、南三陸町に今度行きましたら皆さんに伝えたいことは、諦めずに努力を続ければ思いはかなうんだよ、ということをお伝えしたいなと思っています」

その日には、長男の暉芳さんを初めて南三陸町に連れて行き、父親の活動を見せるつもりです。

■3月10日放送 「情報スタジアム  4時!キャッチ」より

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