神戸市東灘区の酒造会社・白鶴酒造で、昭和初期の酒造りの様子を撮影したフィルムが見つかりました。 このフィルムには灘五郷でいかに酒造りが盛んであったかが記録されていました。
神戸市から西宮市にかけては灘五郷と呼ばれ、古くから酒造りが盛んな地域で全国の3割を占める日本酒が作られています。
そんな灘五郷でも酒造量1位を誇る白鶴酒造。ここで作られるお酒は年間で5万リットルを超えます。この白鶴酒造でことし、酒造りを知るうえでとても貴重なものが見つかりました。
1743年創業の白鶴酒造は日本酒を作り続けてことしで276年。 映像にはここでおこなってきた酒造りの伝統が記録されていました。
白鶴の西田正裕さんはこのフィルムに収められていた映像に驚いたと言います。
「昭和2年の記録と出てますねこれは酒造りに使う水をタンクに入れて馬車で引いてきたという映像になりますね。」
フィルムには明治から昭和にかけて酒造りに必要な水の運搬方法がどのように変化したのかが記録されていました。
明治から大正頃までは馬車を使って運んでいたものが、船を使って運ぶようになり、さらにより多くの水を運ぶためにホースを使って船に直接汲み上げるように変化していったことが分かります。
この水は宮水と呼ばれ白鶴だけではなく、灘五郷の酒造りには欠かせない貴重な水でした。
宮水が発見された場所には灘五郷の聖地として記念碑が建てられて、その横では今も六甲山の地下を流れる宮水が湧き出ています。
灘の酒造りに欠かせない宮水。 白鶴の映像を見ると昭和2年の映像の中に水の分析記録がありました。
驚くべきはこの当時すでに水の硬度分析まで行っていることです。
白鶴酒造で30年以上に渡り酒造りに携わってきた杜氏の伴光博さんは およそ100年前の映像に伝統の重みを感じたと言います。 江戸時代から受け継がれてきた白鶴の酒造り。
昭和2年の映像を見るとお米の蒸し加減を確かめるため餅を作っているのが分かります。
この蒸し加減ひとつで日本酒の味は大きく変わります。 そのため今も同じ工程でしっかり確認しています。
他にも映像を見ると酒造りの伝統が今もしっかり受け継がれていることが確認できました。
西田さんは次のように話します。「これは単に記録映像というわけではなくて灘の酒造りの伝統を継ぐ財産だと思っております。」
◆12月8日放送「ニュースSUNデー」より