源平合戦ゆかりの地として知られる神戸の須磨寺。
紙芝居に歌声と音色宗派を越えて集まった僧侶たちが競うのは-
仏の教え、「法話」の腕前。笑いあり涙あり。一人の僧侶を追いました。
丹波篠山市にある曹洞宗長楽寺。住職の安達瑞樹さんです。座禅などを通して仏の教えを守り続けています。
この日は市内の檀家の元へ。お経をあげる前に安達さんが語りかけたのは…
「近所のおばあさんがもう93歳、おばあさんが病院に行ったら骨粗しょう症だと言われたと、おばあさんが言うには今からカルシウム剤飲んでも効いてくるのは骨上げの時やと(一同 笑)、火葬場で褒めてもうてもしょうがないと言わはるんで(一同 笑)」
体験談や笑いを盛り込んだ法話です。こだわりの原点は学生時代にあります。安達さんは高校を卒業後、仏教を学ぶために進学した大学で落語研究会に所属。お笑い事務所からスカウトされたこともあるという異色の経歴の持ち主です。今も依頼を受けて各地で落語を披露しています。
学生時代からの習慣がネタ帳を作ることです。
「僕が参考にしているというか今まで行ったところの会場のことをずっと書き留めるノートなんですけれど」
中には会場の様子や日常でのエピソードがびっしり。ノートは4冊にもわたります。僧侶としての知識と落研で培った確かな話術、自分にしかできない方法で笑顔になってもらいたい、そんな思いで出場を決めたのが法話の実力を競う「H1法話グランプリ」です。
「聞いてくれはる人と一緒に楽しい時間が作れればいいなという風には思っています。みんな個性的な人が多いので僕は普通にしようかなと」
迎えた当日、会場にはリハーサルを見つめる安達さんの姿が。練習に余念がないメンバーを前に緊張感が高まります。
H1法話グランプリが幕を開けました。
兵庫県では2回目で全国7つの宗派から8人の若手が参加しました。
グランプリを決めるのはプロの落語家ら5人の審査員と一般の来場者約450人。もう一度会いたいと思った僧侶に1人3票まで投じることができます。
スライドを使って地獄についてポップについて伝える内容や、涙あふれる感動のストーリー。さらには、歌や楽器などの特技を盛り込んだものまで、バラエティに富んだ法話の数々に会場は盛り上がります。
安達さんはく7組中6番目。出番が刻一刻と近づいてきます。そして…
(安達さん法話)
持ち味である落語調の語り口でつかみは上々です。話はクライマックスへ。
安達さんが悩んだ末に選んだテーマは「受け継がれる命」
「普段の何気ない生活からしっかりとこの命を見つめていくということが大事なんやね」(安達さん法話)
命の尊さを最後は教えをしっかりと説き、舞台を後にしました。
(結果発表)「グランプリに輝いたのは安達瑞樹さんです」
見事、7組の頂点に。命という深いテーマと心をつかむ語り口が高い評価を受けました。
(Q、グランプリ受賞の喜びを誰に伝えたい?)
「とりあえずうちの仏さんに、ご本尊に」
仏の教えで笑顔の輪を。熱い思いと磨き上げた話術でこれからも心に残る方法話を伝え続けます。