お出かけ

「瀬戸内国際芸術祭2022」と「四国まんなか千年ものがたり」(後半)

 

◎四国でおなじみの旅いろいろ

岡山から瀬戸内を渡り、香川県に着いた。ここから四国の観光地へ向かう。

四国へは何度も来たが、ほとんど仕事だった。観光目的となると小学校時代にまで遡ることになるが、回ったのは道後温泉とその周辺だけだったような気がする。

JRの駅で手に取ったパンフレットにはいろいろな旅が載せられていた。またいろいろな観光列車があるのを知った。

 

 

◎「大歩危小歩危」へ向かう

関西弁ではボケというのはあまりいい言葉ではない。「呆け」と被ってしまうからだが、この地名「おおぼけこぼけ」の由来は、大股で歩いても小股で歩いても危険な岩だらけの渓谷だから、と教えられた。「呆け」ではなかったのだ、と胸をなでおろす。

 

 

香川県の高松駅から「しまんと5号」に乗り込む。途中の停車駅は坂出―丸亀―多度津―善通寺―琴平―阿波池田で、目的地の大歩危で下車。およそ1時間15分の旅。

阿波池田の手前で吉野川を渡ると吉野川に沿って南へ向かう。やがて黒い岩だらけの渓谷の上を列車が走るようになり、こんな所に誰が線路を敷こうと言ったのか、どんな地位にいる人が決裁したのかと考えてしまう。

やがて長いトンネルを抜けると小歩危。国定公園大歩危峡を見下ろしながら走ると大歩危駅に到着。かずら橋のミニチュアが出迎えてくれたが、雨はまだ降り続いており、雲が低く垂れ込めていた。

 

◎大歩危峡まんなか遊覧船

大歩危小歩危は地学の分野では世界的にも有名なのだとか。ここに着く前、車窓から見下ろしていた吉野川の両側には岩が切り立ち、映画にでてくるような異様な雰囲気。上へ上へと積み重なった地層が地殻変動で盛り上がり、地層が斜めに立っている状態。これが数キロに渡って展開する。

この渓谷を遊覧船に乗り、ガイドさんの説明を聞く。吉野川河口堰建設の反対運動は覚えがある。もっと昔にはダム建設の動きもあったようだ。

 

 

吉野川河口堰建設反対運動をしていた作家、野田知佑さん。ここ吉野川を愛犬とカヌーで下っている様子を見たことがあるが、あの広く緩やかな流れはもっと下流だったのか。上流と下流では姿がまったく異なるのだ。

 

◎祖谷かずら橋

大歩危小歩危から次に向かうのは祖谷のかずら橋。

かずら橋は植物のカズラで編んだ橋。アスレチック場に渡してある橋のようなものだが、スケールが違う。吉野川に注ぐ祖谷川に架かっているのだが、下には巨大な岩がひしめき合い、その間を川が流れる祖谷渓。橋の長さは45メートルで水面まで14メートルもある。

 

 

当日は雨にも関わらず、多くの観光客 が橋を渡った。入り口で料金を支払ったものの、恐れをなして辞退する方もいた。私の前を行くご婦人は両手で手すりを抱え、足元を確認しながらの歩み。他のメンバーから大いに遅れてゴールしていた。

昔の人たちは、険しい渓谷を上り下りして向こう側に渡る苦労より、渓谷に橋を架けることを考えたのだろうが、この事業も困難だっただろう。このような橋が昔から作り続けられていたのは驚きだ。

 

 

この橋に至るまでの山道がまたすごい。眼下に発生した霧が民家を覆う。こんな山奥で生活ができるのかと驚かされるが、源平合戦で逃げ延びた平家の落人が住み着いたと教えられると納得がいく。

さらに山の奥深く行くと「奥祖谷二重かずら橋」というもあるそうだ。

 

◎JR四国で四国まんなか千年物語

四国旅客鉄道(JR四国)が2017年4月1日に運行を開始した臨時特別急行列車「四国まんなか千年物語」。多度津駅 から大歩危駅間を土讃線経由で運行している。

お弁当を持って近くの山や浜へ出かけて1日を過ごす「遊山」がコンセプトの観光列車だ。

 

 

1号車は「春萌(はるあかり)の章」と名付けられた、ゆっくり食事を楽しみながら左右の大きな窓から景色を見られるような作り。

2号車は「夏清(なつすがし)の章」。長いベンチソファーが配置されている。グループでの利用に適している。

3号車は「秋彩(あきみのり)の章」。4人掛けと2人掛けの席が用意されている。

いずれも和のテイストを重視し、配色やライティングにもこだわりが見られる。

 

 

1号車の席に座り、窓の向こうに展開する景色を眺めていると、アテンダントにより遊山のお弁当が運ばれてきた。事前予約しておいた「おとなの遊山箱」だ。地元のシェフによる、徳島県食材を使用した箱には三段重が入っており、どれから箸をつけようか迷ってしまう。

 

 

乗車した大歩危駅では、発車までの時間を地元の人たちが集まり、送り出しのイベントを開いてくれた。観光客と地元とのつながりを大切にしているのが分かる。

 

 

途中停車駅の小歩危駅・阿波川口駅・阿波池田駅・坪尻駅・讃岐財田駅・金蔵寺駅では地元特産品の販売があったり、妖怪に扮した地元有志の歓迎セレモニーがあったりした。また沿線の住宅からは列車に手を振る人多く見られた。思わず手を振り返したが、こんなこと数十年振りかと、恥ずかしくなってしまった。

 

 

いま日本各地で観光列車が大人気だ。3泊4泊する豪華寝台特急も大人気でかなりの抽選倍率だと聞く。料金も高いので家族でというのはなかなか難しい。

四国まんなか千年物語は大歩危と多度津の間での運航なので、行き帰りのどちらかで利用することができる。私は大歩危から乗り込んだが、多度津から乗車した場合の料理は、「さぬきこだわり食材の洋風料理」となっている。

 

 

各車両ではアテンダントがサービスをしてくれる。食事の用意や車内販売でもお世話になった。食事の途中で停車駅に降りて地元特産品を買って戻ると、食べかけの食事の上にシートが被せられていた。細かい心遣いがありがたい。

 

 

日が落ちると車内の照明を落とし、行燈(あんどん)の明かりになる。ハイボールなど飲みながら2日間の旅を思い出す。もう少し天気が良ければと、振り出しに戻ることなく、いろいろと貴重な体験ができた旅であった。     (記事:福田晃一)

 

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