■ワールドカップ優勝のヒロイン
日本女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」は9月26日、これまで2代続けて女性が務めた「チェア」(理事長)にJリーグの野々村芳和チェアマンが、副理事長にJFA(日本サッカー協会)の宮本恒靖会長が、それぞれ就任したと発表した。
また新しい理事に、WEリーグ・コミュニティオーガナイザーの海堀(かいほり)あゆみさんが就任したと発表した。
海堀さんは京都府出身で、INAC神戸レオネッサのGKとして活躍。
2011年のFIFA女子ワールドカップ決勝のアメリカ戦では、PK戦でシュート2本を止めるスーパーセーブを見せ、なでしこジャパンの初優勝に貢献した。
海堀新理事にリモートでインタビュー取材した。
■女子サッカーを文化に
Q.理事就任の抱負を–
「改めて身が引き締まると言うか、責任を感じながら、このリーグがより良くなるように理事の1人として頑張りたいと思っています。
Jリーグの野々村チェアマンがチェアで、JFA会長の宮本さんが副理事長で来ていただいた。サッカー界全体を盛り上げようというメッセージがこもっていると思います。女子サッカーも日本のサッカーの1つ。Jリーグだけがよくなればいいものでもない」
Q.女性理事として–
「女性の1人として責任は持っているが、女性だから(理事に)入れるわけでもない。(自身の)いろんな経験があったから入ったと思うので、今までやってきたリーグでの経験を生かして頑張りたいです。
女子サッカー界から継続的に、(女性を取り巻く)社会的な課題の“気付き”のきっかけや、メッセージを発信できるようにと、1人の女性理事の立場として思っています」
Q.2011年のワールドカップは日本中が熱狂した–
「こうやって皆さんに今でも覚えてもらって、本当に光栄です。不遇の時代があった中で、やっと花咲いたのがあそこ(ワールドカップ)なので……
次世代の選手たちも(ワールドカップで)優勝してくれると思うが、その時に、お祭りのような騒ぎだけではなく、宮間(あや=ワールドカップ優勝時のMF)が言うように、女子サッカーを文化として継続させるのはリーグの仕事だと思います」
■プロリーグに可能性ある
WEリーグは2021年に創設され、今年で4シーズン目。
WEとは Women Empowerment (女性が自律的な力を持つこと)を意味する。
INAC神戸レオネッサ、日テレ・東京ベレーザ、三菱重工浦和レッズレディースなど12クラブで構成されるが、集客面や収入面で伸び悩んでいる。
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Q.WEリーグの現状は–
「プロリーグっていうのは、野々村チェアも言ってますが、なかなか簡単なものではないです。簡単なものだったら、すでに2011年にできていると思います。アメリカでも(プロリーグは)2回つぶれている。でも、WEリーグができて4年目を迎えているということは、可能性は絶対にある。
日本のプロリーグとして(サッカー界を)引っ張ってきたJリーグさんや、女子サッカーを支えてくれているJFAさんの力をうまく組み合わせて打開していきたいです。なでしこリーグという歴史あるアマチュアリーグもありますが、選手たちがプロとして輝ける場をより良くしていくしかないと思っています」
Q.レベルは向上しているか–
「今シーズンから(女子の)ACL(アジア・チャンピオンズ・リーグ)が始まり、浦和レッズさんがグループステージですごく良いパフォーマンスをしてくれました(3戦全勝でグループステージを突破し、来年3月の準々決勝に進出)。
(女子の)クラブワールドカップも2026年に始まる。今までは代表でしか世界一を目指すことが出来ませんでしたが、クラブでも世界一を目指せるようになったことは、すごく大きなポイントです。そういう新たな魅力が(女子サッカーに)増えたことも知ってもらいたいです。
(WEリーグができて)サンフレッチェ広島レジーナや大宮アルディージャVENTUSが新規参入してくれたことは、プロリーグができた意味があったと思う。以前は(日テレ・東京ベレーザとINAC神戸レオネッサの)2強と言われた時代もあったが、今は三菱重工浦和レッズレディースがリーグ戦を優勝したり、サンフレッチェ広島レジーナがカップ戦を優勝したり、クラブのレベルが上がってきています。
クラシエカップの準決勝(12/8に長崎の「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」で開催)と、決勝(12/29に国立競技場で開催)は新たなチャレンジです。年末、国立に沢山のお客さんに来てもらって、女子サッカー良いよね、と盛り上げられるようにしたいです」
Q.昨シーズンの平均観客数は1723人にとどまる–
「急に増えるものでもないので、地道に取り組むしかないと思っています。年々、少しずつは増えているので、色々な人の力を借りたり、女子サッカーのファンや仲間を増やしながら、着実に積み上げていくことは大事かなと思います」
■胸張ってWEリーガーに
Q.有力選手の海外移籍が続いている–
「世界が女子サッカーに力を入れてきて、プロリーグが各国で立ち上がり、世界にチャレンジしやすくなったことは(海外移籍の理由として)大きいと思う。
WEリーグも競技面のレベルは上がっています。アンダー世代のU17やU20で活躍している若い選手やこれからの選手もたくさんWEリーグにはいます。かと思えば、2011年に一緒に優勝したメンバーも(現役で)頑張っている。WEリーグから世界に出て行った選手たちが、また帰って来れるリーグにすることも大事だと思います」
Q.海堀さんがサッカーを始めた頃は–
「私がサッカーを始めた頃は、恥ずかしながら女の子のチームがあるとは全く知らなかった。男の子たちとサッカーをし、小学校のアルバムに私は『将来はJリーガーになりたい』と書いていました。男の子たちもそう書いていたからです。
今は女の子のチームが増え、なでしこジャパンという言葉は恐らく小さな子どもでも知っている。子どもたちが日本でプロサッカー選手になりたいという時に、『WEリーガーになりたい』と胸を張って書けるのは大きな進歩だと思います」
Q.最後にサッカーに取り組む若い女性たちにメッセージを–
「いや、もう、思う存分、好きなことをやってほしいと思います。本当に上を、プロを目指す選手は頑張ってほしいです。サッカーに関わる様々な仕事もあるので、自分のなりたい自分になってほしいなと思います」
(浮田信明)