【調査報道】洲本市のふるさと納税問題 市民に閉ざされた百条委員会

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特集は、373品の返礼品で違反が指摘された、洲本市のふるさと納税についてです。

洲本市議会は、強い調査権を持つ百条委員会を立ち上げたのですが、

① いつ開催?:HPに数行の日程記載のみ
② どんなルールで運用:ルール記した手引き→非公開 情報公開請求→不開示
③ 証人尋問の撮影は?:撮影不許可 ライブ配信なし 36席の傍聴席のみ
④ 委員会に提出された記録資料:メディア閲覧不可 記者会見で質問するしかない

市民に情報が閉ざされた百条委員会。非公開で隠されていたある問題について、サンテレビの調査報道特集です。

【洲本市 上崎勝規市長】
「改めてここでお詫び申し上げます。どうも申し訳ございませんでした」

基準を超える高額な返礼品を寄付者に送っていたとして、洲本市は2022年5月1日から2年間、ふるさと納税の制度の対象から除外。2年が過ぎた今も復帰できていません。

このふるさと納税の中心的な業務を担っていたとされる人物が、魅力創生課元課長です。

指定取り消しに関連する多岐にわたる非違行為があったとして、2022年3月に停職6カ月の懲戒処分。その後、自主退職しています。

半年後、市の第三者調査委員会がこの問題を調査しますが…。

【第三者調査委員会 上村敏之教授】
「総務省の基準から見たら違反だらけで、これを見た時はがくぜんとしました。はっきりと言って終われませんでした。あまりにも問題が多すぎるわけです」

基準違反の返礼品は373品。最終報告書では、温泉利用券をめぐり、市がうその公文書を作成したり、外部の団体を巻き込んで偽装を図ったりした疑いがあること。

また市が発行した商品券は管理番号が割り振られておらず、無断で持ち出されても分からない状況の中、元課長が不正に使用しパソコンやプリンターを購入したこと。

さらに返礼品のおせち料理については、元課長が条例で定められた議会の承認を得ずに、申込書に偽の公印を押して2000セット4800万円分を
東京の企業に発注した疑いがあることなど、さまざまな疑惑が指摘されていました。

洲本市議会は去年10月、元職員の不適切な事務処理などを調査する特別委員会、百条委員会を設置。しかし…。

【藤岡記者】
「きょうの証人尋問も非公開ということです」
「きょうは市長と副市長の証人尋問なんですけども、きょうも中の撮影は許されませんでした」
「きょうも中の撮影は許されませんでした」

証人尋問の様子は一切撮影が認められず、仕切りが。上崎市長は唯一仕切りを外されるも、撮影は認められませんでした。

一方、やましいことは何もないと公開を要望した証人がいます。

洲本市の旧東京アンテナショップの元店長・田村伸也さんです。

【田村さん】
「リアルタイムで見られるものがないのは市民に声が届かない」

田村さんは、元課長が店にある弁当などの商品を勝手に食べたり、親しい女性に公金で高級和牛を贈っていたことなどをサンテレビに内部告発。

証人尋問で元店長は、事実であると証言。一方、元課長は事実ではないと証言しています。

元店長は実名顔出しで記者の質問に応え、報道撮影の許可を本人が事務局に求めても認められなかったと話します。

【田村さん】
「あんなパーテーションもいりませんし、よく最近いろいろな地方自治体で言われている『議会の見える化』にならってテレビカメラを入れていただいたり、ライブ配信を入れていただいて、市民の方にリアルタイムで見ていただけるような『見える化』ですよね」

神戸市の第三者委員会の委員を歴任するなど、行政問題にも精通する藤本尚道弁護士は―。

【藤本弁護士】
「公開しない、撮影を許さないということによって、真実を引き出す効果はありうるんです。
だけど、本人が映してほしい。自分の言っていることをきちっと聞いてほしいと思っている場合にそれを許さない。つまり公開しないというのは何か不思議な気がします」

百条委員会には強い調査権があり、証人を呼んで証言を求めるだけではなく、この問題に関連する企業や洲本市から記録資料の提出を求めることもできます。

その内容を積極的に公開するよう、サンテレビが加盟する淡路島記者クラブが委員会に要望書を提出しますが…。

【百条委員会委員長 木戸隆一郎議員】
「その点について委員の中で協議をしましたけども、法律にのっとって運用している中で、そのような形ですることは難しいという結論を得ているので、大変申し訳ないですけども、そういった形でお願いしたい。
当事者間でしか見ることができないというような法律上の運用もあるので」

法律上の運用という見解について、藤本弁護士は―。

【藤本弁護士】
「法律が公開しなさいと書いていないから、しなくてもいいだろうという。そういうノリではないでしょうかね。
だから、それで俺たちは法律に違反していない、だからのっとってやっているんだという、ひとつの言葉のあやですね」
「議会が追及する問題、市民・国民に対して公開していくというのは、ひとつの大きな流れだと思うんですけどね。それをする気がないというだけのことです」

どのようなルールで百条委員会を運用しているのか。淡路島記者クラブはルールを記した手引きも公開を求めましたが、中身は明かされませんでした。

サンテレビは市議会と洲本市に対して手引きの情報公開請求を行うも、行政文書にあたらないとして開示されませんでした。

【藤本弁護士】
「国民・市民の知る権利に奉仕する形でマスコミが動いているわけですから、それに対して公開しないという動きというのは市民国民の知る権利を害している。
これだけ停滞低迷しているということは、議会そのものにやる気がない、本気度が疑われると私は思っていますね」

どのような記録資料が委員会に提出されたのか。私たちは記者会見で委員長にひとつひとつ質問をして聞き出すしか手段はありませんでした。

2月22日(百条委員会委員長に1回目の質問)
Q私たちが見ることができないですので、ひとつひとつ確認したい
【木戸議員(委員長)】
「パソコンについては、パソコン、プリンターについては1台ずつ」
Qパソコン、プリンターは1台ずつ
「1台ずつ」
Qパソコンは
「1台です」
Qそれが請求としてある
「商品券として請求したパソコン」

質問したのは、市内の文具店から百条委員会に提出した記録資料について。

木戸議員は、元課長が洲本市の商品券を不正に使用して購入したパソコンは、1台と回答しました。しかし…。

【5月2日放送のサンテレビニュース】
「浜辺副市長は、魅力創生課の元課長が合わせて3台のパソコンを不正に取得していたと証言しました」

5月2日の百条委員会で、浜辺学副市長は、元課長が合わせて3台のパソコンを不正に入手したと証言。このうち1台は商品券の不正使用ではなく、請求書を書き換えて不正に入手したことがサンテレビの取材で分かっています。改めて質問をすると-。

5月2日(委員長に2回目の質問)
Q百条委員会が請求した資料に2台と記されていたのでは
【木戸議員】
「いえ、それはなかったです。なかったです。
請求した時点でその1台しかなかったのかどうかということはあるかもしれませんけど、請求した中では1台だけでした」

記録資料は委員もコピーができないルールのため、サンテレビは他の委員にも資料について聞き取りを行いました。

【濱野隆議員】
「2台と書いてありました。私は文書を見て、パソコンとプリンターと、パソコンと記載があります」

2台と回答した濱野委員にその記録資料を再現してもらいました。

すると市内の文具店から委員会に送られた記録資料には、もう1台のパソコンが。

5月25日(委員長に2回目の質問)
Q実際の記録提出は2台と書かれていたのでは
【木戸議員】
「改めて記録提出の要求を見ると、正確に言うのがちょっと難しい部分があるんですけども。
商品券を使用してパソコンを購入したとみられるのは2台なんですけども、請求書が未発行とか、その部分を浜辺副市長が商品券をその分をお金を渡した、商品券を引き上げた経緯もあるので。
その部分で少し認識の違いもあって、正確に伝えられなかった部分があるかもしれないですけども、平たく言うと2台」

【藤岡記者】
「再現をしました、記録の提出要求のあったものを。2台と書かれているのであれば、私たちに2台という説明をしなければいけなかったのでは?」
【木戸議員】
「まず、これをこういう形で出すのがいいのか、私は今、判断を持ち合わせていません。
記録の提出があったものを他の方に教えて、こういう形で出すというのがよいのかどうか判断がついていませんので。これについて合っているのか合っていないのかというのは、私は申し上げられない」
【藤岡記者】
「違う回答をしているじゃないですか。1台と答えた。
なぜこの1台について触れなかったのか。私たちは見る手段がない。そういうルールが作られたので」
【木戸議員】
「2月の段階で私がどういうふうに申し上げたか正確に教えていただかないと」
【藤岡記者】
「あえてもう1台を話さなかった理由は何ですか?」
【木戸】
「話したのではなくて、きちっとお調べしてきょう、こうやって話をしています。別に隠すということはしていません」

明らかになった3台目の不正入手のパソコン。商品券がお金に換金されていなかったこと、浜辺副市長が代わりに代金を支払ったという背景があったパソコンなんです。

元課長は浜辺副市長の証言について「何をもって3台と言っているのかわからない。商品券で買ったのは1台だ」と証言しています。

浜辺副市長は「元課長が退職時に持って行っていた。1年以上未払いになっていて、このパソコンがある職員のところに突然送られてきた。どう処理をするかを考えた。公社でも使っていたため、公社の理事長の私が代わりに45万円を支払って、450枚の商品券は文具店から市に返却された」と証言しています。

浜辺副市長がやるべきだったのは、自らが弁済することではなく、刑事告発だったのではないでしょうか。

こういった背景が、私たちメディアに明かされなかった情報でした。

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