【ひょうご形の無い文化財】阿万の風流大踊小踊

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古式ゆかしい装束の踊り手が、お囃子と歌に合わせてゆったりと踊る、南あわじ市の伝統行事「阿万の風流大踊小踊(ふりゅうおおおどりこおどり)」。毎年9月に亀岡八幡神社の拝殿で奉納されます。

1967年に兵庫県の重要無形民俗文化財、2011年には国の重要無形民俗文化財に指定され、去年11月30日、全国のほかの風流踊とともにユネスコの無形文化遺産に登録されました。

【阿万風流踊保存会 佐渡達史会長】
「こんな賞をもらえるというのは、先人たちがずっと伝承してきてくれたということと、神社をはじめ、地域の人々の支えがあってずっと続けてこられたことが大きな要因であると思いながら、東京に行ってきました」

ことし7月、文部科学省でユネスコからの登録認定証の伝達式が行われ、阿万風流踊保存会の佐渡達史会長が出席しました。

そして、認定後初めての踊の披露前日の9月16日。亀岡八幡神社では、記念碑が除幕されました。

この日の夜は、踊の最後の合同稽古です。

実は、大踊と小踊はまったく別の踊で、大踊は室町時代の1550年頃、小踊は江戸時代中期の1700年頃の発祥とされています。

時代の違うふたつの踊が交互に演じられるのが、この行事の特徴です。

小踊の稽古に取り組む小原丈弥さん。ユネスコに認定された後、保存会が後継者育成を目的に行った踊り手などの募集に応じて、今回が初挑戦です。

【小原丈弥さん】
「難しいですね、やっぱり。慣れるまで大変だと思います。
緊張してしまって(振りが)飛んでしまうこともあるので、なるべく飛ばないよう、みんなに合わせてきっちりやりたい」

大踊で歌い手を務める、ベテランの大西文博さん。長年取り組んできた伝統行事が国際的に評価されて、今までにない気持ちで本番を迎えようとしています。

【大西文博さん】
「我々もかかわって大方65年くらいになるが、こういうことは初めてです。
まあ、ひとつの大きな晴れ舞台、何年に一遍あるかないかの晴れ舞台になると思う。ちょっと暑そうやけど」

9月17日。「大踊小踊」の本番の日です。今回は、ユネスコ無形文化遺産登録の報告会として屋外で披露され、踊の演目は通常より3つ多い8演目となります。

この行事の歴史に詳しい、保存会の前会長・森川勝次さんに踊の由来をたずねました。

【阿万風流踊保存会の前会長 森川勝次さん】
「神殿にこもって水垢離をしながら雨乞いをして、その願いがかなえられたときにそのお礼、強郷土繁栄、五穀豊穣を願って、願ほどきとしてここに大きな舞台を作って風流踊が行われた」

始まりは、小踊の「神楽踊」。烏帽子をかぶった踊り手がお囃子と歌に合わせて踊ります。

初めての本番となる小原さんが懸命に踊ります。保存会会長の佐渡さんは拍子木の担当です。

こちらは大踊。衣装はシンプルな着物で、大きなうちわを使うのが特徴です。また、前踊と呼ばれる最前列の踊り手は、扇子を持ったり、「チャッキリコ」という2本の竹の棒を打ち鳴らします。ベテランの大西さんは、見事な歌を響かせていました。

大踊は演目が変わっても衣装は変わりません。一方の小踊は、演目によって衣装が変わります。

この「向山(むかえのやま)踊」は黄色い着物。そして、「諫鼓(かんだいこ)踊」では黒い着物を着て踊るなど、江戸時代の文化を色濃く残しています。

【観客の女性】
「いいですね。ちょっとゆっくりした踊ですけど、いいです。(観たのは)初めてです。ここで生まれたんですけど初めて観ます」

最後の演目は、小踊の「綾の踊」です。ここにも小原さんは出演していました。

【小原さん】
「初めてだったので、みんな初めてのほかの方も、バタバタと着替えとか、いろいろ大変な部分もありましたが、今は無事に終わってホッとしています。続けられる限りは続けたいと思います」

【大西さん】
「ユネスコに認定されたということの認識を、十分に皆理解して、今後の継承に結び付けていきたいというような、きょうは踊、歌であったと思います」

これは1967年に撮影された「大踊小踊」です。大踊の前列で前踊を担当しているのは、小学生や青年たちです。この頃は、地元の若い人たちが参加して踊を盛り上げていました。

しかし、少子化もあって子どもの参加が減り、踊の様子も変わってきました。保存会では、ユネスコの認定をきっかけに状況を変えようとしています。

【佐渡会長】
「大踊7曲、小踊8曲、全部を録画して、後世に残そうと。これから全部ビデオを見ながら練習して収録すると。
これがまた大きな意味があるのじゃないかなと、僕自身は思っています」

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