内部告発【後編】洲本市元課長の不正行為「公金で高級和牛を女性に」~サンテレビの市への情報公開請求で分かったお金の流れ~

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基準を超える高額な返礼品を寄付者に送っていたとして、ふるさと納税の制度から2年間除外されている洲本市。ふるさと納税の問題をめぐり、不適正な事務処理があったとして魅力創生課の元課長が停職6カ月の懲戒処分を受け、その後依願退職しています。この他にも不正行為があったとして、サンテレビに内部告発がありました。

淡路牛のイメージ

洲本市のふるさと納税のPR事業を担当した広告代理店の女性

前編では、洲本市のふるさと納税をPRする東京のアンテナショップの元店員らによる内部告発について報道。魅力創生課の元課長の疑惑について数々の証言を得ました。元課長が支払いをせずに店の商品を勝手に渡していたとされる相手の1人が当時東京の広告代理店に勤めていた女性です。

アンテナショップ元店長
「一緒に連れてきている女性に渡したりとか淡路島から連れてきた業者さんにお渡ししたりされていました」

サンテレビの取材に応じたのは、洲本市が出資する第三セクターの元嘱託職員で2019年1月から5月まで東京のアンテナショップの店長を務めた男性です。市はこの第三セクターの筆頭株主でふるさと納税を担当する元課長は、PR事業を担っていた広告代理店の女性とともに店に出入りしていたそうです。

元店員
「『あの女性は誰なんだろう』と思って。『市の職員ですか?』と店長にお聞きしたところ、『全く市の関係者ではない』ということで、その女性は広告代理店の女性で全くの部外者が、商品やお店のレイアウトをしていた」

 

高級和牛を女性に

2018年11月、洲本市が主催した市の第三セクターが運営を担ったイベントです。東京のアンテナショップがオープンする前で元店長もこの仕事を手伝っていました。イベントではサイコロステーキが販売されていましたが、元課長は、第三セクターの職員に対してイベントとは関係のない高級和牛を注文するよう依頼したそうです。

元店長
「終了間際にそれまでと違ってちょっと高いお肉を注文して取ってきてくれと。『終了間際にそんなに頼んでどうするんやろうな』と当時のスタッフがみんな話をしていたのは覚えている」

元課長から渡された自筆の送り状。不審に思った元店長が送り状を確認すると、送り先には広告代理店の女性の住所と名前が。

元店長
「案の定肉が余って、後日課長がご家族。東京の方お2人に送っといてくれと。送り状を書いていました」

高級和牛の商品代金も発送代金も第三セクターが後に洲本市に請求していて、元課長から支払いはなかったそうです。

Q肉の支払いは公金で賄っている
元店長「はい」
Qとうことは公金を私用した
元店長「はい。その仕入れに関しては魅力創生課から我々に依頼が来て、我々が業者さんに頼んで業者さんが我々に納品してその冷蔵庫で預かっていると。後日、それを我々は魅力創生課に請求する」

この他にもふるさと納税関連の請求書に混ぜ込んで広告代理店の女性に公金でハンバーグを送るなど常態化していたと元店長は指摘します。公金で肉を送っていた疑惑については、元店長以外からも同様の証言が寄せられています。

元課長と広告代理店に勤めていた女性

元課長 自筆の送り状

一方、元課長はサンテレビの取材に対して、「終了間際に頼んでいないし、指示したのは私ではない。店の入り口でお金を払っているので二重請求ではないか」と主張しています。

 

洲本市に対して女性に関連する企業の資料を情報公開請求

開示された資料

サンテレビは、この女性が勤めていた広告代理店と洲本市との契約や決裁に関する資料について、情報公開請求を行いました。その資料をもとにサンテレビが集計した結果、2016年度に約300万円。17年度に約1900万円。18年度には約2800万円。19年度には約1100万円が洲本市から広告代理店に支払われていました。内容は、ふるさと納税関連のイベントや新聞広告、雑誌、ポリ袋などです。しかし、2019年11月以降、この広告代理店との取引は突然なくなります。このころと同じ時期に、洲本市は広告事業を別の企業Aに乗り換えました。

 

洲本市の広告 女性が勤めていた広告代理店から女性が立ち上げた企業Aへ

【洲本市議会 9月19日】
濱野議員
「企業Aは法人なのか?個人事業主なのか?どういう業種なのか?」
企画情報部長
「個人事業主となっております。業種としては広告事業、制作物のデザイン管理等を行っている事業者です」

東京都内の企業Aが入居する建物

サンテレビが情報公開請求で入手した資料によりますと、企業Aの代表者は、これまで取引をしていた広告代理店の女性の名前が記されていました。洲本市によりますと、企業Aが債権者登録をして市と取引を始めたのは2019年10月31日。女性は広告代理店を退職し、企業Aを立ち上げたそうです。

【洲本市議会9月19日】
濱野議員
「すべての書類に随意契約などの書類は存在していたのでしょうか?」
企画情報部長
「契約書が必要な委託業者は1件。それについては契約書がございます」

企業Aに支払われたのは、ふるさと納税をPRする読売新聞や朝日新聞の広告など、2019年度から22年度の4年間で合わせて4643万7710円。洲本市は立ち上げて間もない個人事業主にこれまでの広告事業を乗り換えていました。サンテレビが情報公開請求で、52件の決裁書や請求書などを入手しましたが、契約書は1件しかありませんでした。

洲本市議会

【洲本市議会9月20日】
木元議員
「ちゃんと契約書が交わされているかどうか?」
企画情報部長
「契約書が必要な委託業務については契約書がございます。広告業務等については契約書の必要のない業務なので契約書はございません」
木元議員
「これだけの金額を契約書もなしにですね。ふるさと納税が中止(2022年5月から2年間制度から除外)になっているのにお付き合いしていた?」
企画情報部長
「ふるさと納税が除外された以降も、企業Aに対して支払いがございます。内容といたしましては、るるぶ淡路島の印刷物、電子ブック。修正等、追加等の作業をしていただいているものでございます」

唯一あった洲本市と企業Aとの契約書

【洲本市議会9月19日】
濱野議員
「洲本市が元課長の親しい女性が経営する企業Aへ合計4600万円もの業務発注を決裁し続けたことについてどのようにお考えですか?」
総務部長
「今の議員のご質問については私の方からは答弁を差し控えさせていただきます」

サンテレビの取材に対し元課長は、「企業Aの女性とは親しい仲ではない。取引していた広告代理店の担当者や営業担当が病気などでいなくなったので仕事をお願いした」と主張しています。企業Aは、ふるさと納税制度の指定停止から4か月後の2022年9月29日を最後に市との取引はありません。

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