■新チームが始動
女子バレーボール・Vリーグ2部(V2)に降格したヴィクトリーナ姫路が、日本代表・196㎝の小林エンジェリーナを新戦力に加え、8月1日に着任したアヴィタル・セリンジャー新監督のもと、10月のシーズン開幕へ向けて意欲的な練習を続けている。
■言葉の壁なし
小林エンジェリーナはアメリカ・シカゴ出身で、アメリカ人の父、日本人の母を持つ。
アメリカの大学院を卒業。バレーボールは引退し、マーケティング関係の仕事に就く予定だったが、ことし3月、日本代表に招集された。
9月にはヴィクトリーナへの入団を発表。
幼少時から母親とは日本語で話していたため、言葉の壁はなく、チームにすぐに溶け込んだ。
「みんな優しくしてくれる。いろいろ教えてくれるし、オフの日はみんなで遊んでます(笑)」
小林は女子日本代表の歴代“最長身”。ジャンプした最高到達点は3メートルを優に超す。
ポジションは前衛の中央に位置する「ミドルブロッカー」で、相手のスパイクをブロックしたり、速攻を決めたりと、機敏な動きが要求される。
しかし「日本のバレーボールは高さがない分、テンポやコンビネーションが速く、ブロッカーとしては迷ってしまう」と、日米の違いも感じている。
ヴィクトリーナには日本代表の宮部藍梨(181㎝)がいるほか、タイ代表のチャッチュオン・モクシー(181㎝)の入団も決まり、弱点だった高さの壁は解消されつつある。
■モットーは「百%」
8月1日に着任したセリンジャー監督は、二度にわたって女子オランダ代表チームを率いたのをはじめ、各国のチームで指揮を執った“名将”。
取材した日の練習では、ネット近くに立ち、速いテンポで次々にスパイクを打ちながら、選手にレシーブをさせ、レシーブから攻撃に移るために各自がどう動けばよいか、細かい指示を与えていた。
「こういう状況の時は、誰がどう動くか、誰にトスを上げるか、どこにオープニングエリアを作るかなど、コンビネーションに力を入れている」。
新監督の指導について荒谷栞キャプテンは、「(練習内容は)もうほんとにガラッと変わりました。リズムがあり、ボールを触る数が多い。スパイクレシーブの練習もシステム的で、練習をやっていくうちに自信が付いてきている」と語る。
セリンジャー監督は5月の来日会見で、色紙に自ら漢字で「百%」とモットーを書き込んだ。
「100%は進化していくもの。あの時100%でも今では80%かもしれない。限界を持ってほしくない。結果が100%かどうかではなく、どう挑んだかが大切だ」と、取材に対し自らの“哲学”を熱く語った。
■東レや韓国女王を破る
セリンジャー監督の“初陣”となった「近畿総合選手権大会」(9/2~3、大阪市)で、ヴィクトリーナは高校チームや大学チームを連破。
決勝ではV1東レアローズを2-1で破り、4連勝で2年連続の優勝を遂げた。
またプレシーズンマッチとして行われた韓国Vリーグ優勝チーム「韓国道路公社ハイパス」との国際招待試合(9/6、ヴィクトリーナ・ウインク体育館)では、満員の観客の前で熱戦を展開。
2-1(25-13、21-25、25-19)で“韓国女王”を破った。
この試合で松本愛希穂が相手選手と接触し、「右足関節外側靭帯損傷」で全治4週間と診断された。
V2リーグは10月28日に開幕する。
ヴィクトリーナは兵庫県たつの市の龍野体育館で28、29の両日、ホームゲームを行う。
開幕まであと1カ月余り。
各自が100%に挑み、新生ヴィクトリーナの実力を見せてほしい。
(浮田信明)