【特集】保育士配置基準 見直し求める声「国基準は実態に合っていない」

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静岡県のこども園で、送迎バスに園児が置き去りにされ熱中症で死亡した事件を受け、政府は2023年4月から、置き去りを防ぐ安全装置の設置を義務づけます。

装置の実証実験などが進む一方で、現場からは保育士の配置基準の見直しを求める切実な声も聞かれています。

12月5日から伊丹市で始まった実証実験。来年4月から幼稚園や保育所などの送迎バスに子どもの置き去りを防ぐための安全装置の設置が義務づけられることを受け、市とIT関連企業の「アイテック阪急阪神」が行っています。

この装置はスマートフォンのアプリを活用したもので2種類の方法があります。

ひとつ目は園児らが車内に残っていないかを確認する際に、座席の下に付けられたQRコードを読み取ります。全ての席のコードを読み取らなければ完了の報告ができないようになっていて、確認を終えると職員室にメールが届き、バスに乗っている職員と職員室側が二重にチェックできる仕組みです。

もうひとつは園児1人ひとりに「ビーコン」と呼ばれる電波を発する小さなタグを持たせるもので、車内で電波が発せられていれば置き去りに気付くことができます。こちらも確認が完了すると職員室にメールが通知されます。

一方、保育の現場では-。尼崎市にある私立の認可保育園「おさなご保育園」。0歳から5歳児、合わせて70人ほどが通っています。

【1歳児担当の保育士】
「食後が結構大変で一遍に終わったりするので、片付けしながら次パジャマに着替えるので着替えしながらおしっこも行ってとか、2人でずっとしているので食後が一番大変かな」
「大変な時もありますけど、子どもたちの成長した姿とかをみて、また頑張ろうと思えるので。かわいいです」

小西律子園長は子どもの発達と命を守るための根本的な対策として保育士の配置基準を見直す必要があると話します。

【おさなご保育園 小西園長】
「国の基準での人の配置、これがやっぱり一番。子どものためにも働く人のためにも、それと保護者のためにもそこが一番ネック」

これは保育士1人あたりが見る子どもの数を定めた現在の国の基準です。0歳児は3人、1歳から2歳児は6人、3歳児は20人、4歳から5歳児は30人を1人の保育士が見るという配置基準です。

4歳から5歳児は1948年から70年以上一度も基準が変わっておらず、先進国平均のおよそ2倍となっています。おさなご保育園では国の基準以上の保育士を配置していますが、小西園長は特に1歳児の園児に対する配置が課題だと言います。

【小西園長】
「3月31日まで0歳児で3対1(園児:保育士)でお世話していた子が、4月1日から6対1、1人の保育士が6人のお子さんを見るというのはどう考えても足りません。0歳児から1歳児に変わる頃って、はいはいもして歩き出して、とてもじゃないけど危険ですよね。やっぱり国の制度がそこをきちんと保障しないと、ちょっと限界かなと」

社会福祉法人あゆみ福祉会理事長で、尼崎都市・自治体問題研究所の副理事長を務める田近吉雄さんも、保育園には障害がある園児や特に配慮が必要な園児もいて、国の基準は実態に則していないと訴えます。

【あゆみ福祉会 田近理事長】
「課題を持ったお子さんというのは突然、集団の場に居られなくなるんですね。例えば3~4歳児は担任が1人です。そこに課題を持った子がクラスに複数いる。ひとりの子どもがそういう状態になると本当はそっちにかかりたいけれども、他の子どもたちが見られなくなる。現実にそういうことが起こる。ゆとりがないからその場しのぎの対応になってしまう」

田近さんらは去年、尼崎市内の保育園などを対象に保育の実態を調べるアンケートを実施。その結果、多くの園で国の基準以上の保育士を配置している実態が明らかになりました。

児童福祉法の一部改正以降、保育士の配置基準は都道府県、もしくは政令市や中核市の条例で定めることができます。県内では明石市や西宮市、宝塚市で、国の基準以上の配置を定めていることから、田近さんは尼崎市に対しても基準の見直しを求めています。

【田近理事長】
「それだけたくさん保育士を配置していると結果どうなるか、1人当たりの賃金が当然減ってしまう。経営側からすると職員の皆さんに給料を十分に上げてあげることができないという悩みが出てきます。生まれた所の自治体によって保育士の配置基準が違う、国基準より手厚い所もある、低い所もある。こういう格差があって良いのかというのを考えていただきたい」

子どもたちの育ちと安全を守るために、抜本的な対策が求められています。

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