まずはこちらの写真をごらんください。これは北海道にのみ生息するエゾシカです。本州に生息するニホンジカは体重100キロくらいですが、エゾシカは体が一回り大きく体重150キロにも及びます。
いま、北海道はこのエゾシカによる農作物の被害に頭を抱えています。
みなさんは県内で確認されている農林業の被害額がいくらかご存じですか?おととしのデータですが、シカによる被害額はおよそ1億5000万円です。これに対して北海道では40億円を超えているんです。
エゾシカは明治時代に一度絶滅の危機を迎えます。そのため保護政策が取られましたが、この保護政策の影響で爆発的に数が増えてしまったんです。
北海道はピーク時の77万頭から半分の38万頭に減らす取り組みを続けています。ただ予算を使って殺処分するだけではなく、北海道の特産品として全国にPRする活動に力をいれています。10月に神戸市内で開かれたセミナーの様子を取材してきました。
10月、神戸市立中央区文化センターで北海道はエゾシカの魅力をPRするセミナーを開催。飲食店の経営者やホテルのシェフなどが参加していました。
【北海道 野生動物対策課 エゾシカ担当 田名瀬雅元課長】
「エゾシカの推定生息数は、兵庫県の(ニホンジカ)の生息数は約16万頭。北海道では67万頭と農業被害が非常に大きい。年間で40億円を超えます。」
神戸で開かれたセミナーではエゾシカの革で作られたカバンも紹介されました。
【24KIRICO 高瀬季里子代表】
「姫路まで行きまして、『白なめし』の技術でバッグを作っています。」
なんと、このバッグには姫路の伝統工芸の技術が取り入れられていました。バッグを作ったのは、北海道で革製品のデザインと販売を手掛ける高瀬季里子さんです。
【高瀬さん】
「2008年ごろから姫路の白なめしの技術で一番最初に作ったのがきっかけ。
(革の特徴は)すごく柔らかくて、繊維自体に空気を含んでいるのでふんわりしている。肌あたりが滑らかでしなやかで、肌に吸いつくような感触。」
高瀬さんの工房では、バッグのほかにもペンケースやグラスカバーなども製造販売しています。
姫路の技術が詰まった白いバッグはエレガントな大人の女性を演出。可愛い赤でキュートな雰囲気もこの秋にはぴったりです。
エゾシカのジビエは北海道が最もPRしたいグルメです。セミナーでは、フランスで3年修業した宇野勇蔵シェフが自信を込めておすすめする「エゾシカのワイン煮込み」が提供されました。
【吉本アナ】
「口の中でホワッてほどけました。柔らかい!
ジビエというと肉質がしっかりしているイメージなんですけど、柔らかくてとってもジューシーです。まったくパサパサしてなくて、赤ワインとバターのコクが相まって濃厚な味付けになっています。」
【ル・ビストロ 宇野勇蔵シェフ】
「エゾシカは脂を見てもらったらわかる通り脂がまわってますので、煮込みは3時間くらい煮込んでいる。全国で通用する食材だと思います。」
私の食レポだけじゃ信用できませんよね。セミナー参加者は飲食店の経営者やホテルのシェフなど料理のプロたちです。反応はどうでしょうか?
【参加者たち】
「おいしい。」
「ジビエっぽくないというか、いい意味で食べやすくておいしい。」
【北海道 野生動物対策課 エゾシカ対策係 大和田望主査】
「認証制度を設けて、安心安全なお肉を世に送り出すシステムが平成28年から動き出した。
ここで(おいしい)といった声も聞かれてうれしい。ぜひぜひみなさんのホテルとかで食材としてご活用いただければ、我々も願ったりかなったりです。」
エゾシカのセミナーはとても好評でした。
安定供給を目指した北海道は、捕獲したエゾシカをそのまま出荷するのではなく、飼育して需要に応じて出荷する一時飼育を導入しています。また、認証制度を設け、安全安心な肉の提供を目指しているということです。
エゾシカ肉の購入などは、「エゾシカ肉処理施設認証制度」で検索すると北海道庁のHPに16の認証事業所の連絡先が掲載されています。