かつて宿場町だった面影を色濃く残す、丹波篠山市福住。
マグナムコーヒーはオーガニック素材にこだわった人気のカフェです。オーナーの古荘さんは6年前に大阪から移住してきました。
【マグナムコーヒー 古荘利治さん】
「この景観、風景もいいですし、なんといっても人がいいです。食べ物もまたおいしいです。すべていいんですかね。
本店は大阪の心斎橋にあるんですけれど、そこと比べると(家賃は)桁違いですよね。全然こちらの方が安くて。」
店は昭和初期に建てられた芝居小屋を改装。サイクリングやツーリング、ドライブがてらに訪れる人はもちろん、昔を知る地域の人たちが懐かしんで店を訪れるそうです。
【古荘さん】
「80代の人たちだったら、ここで芝居を観たとか映画を観たとかいうのを教えてもらったり。
近所の人たちが畑の帰りに寄っていただいて、市内から来た人たちと黒豆の話、『そういう風に作るんや』って会話が生まれたりもありますし。面白いですよね。」
旧福住小学校は、現在、地域振興の拠点として活用されています。
Local PR Plan代表の安達鷹矢さん。インターネット関連サービスの楽天を退社後、11年前に福住に移住。ITのスキルを活かし、PRのコンサルティングを中心に行政や民間企業の情報発信をサポートするほか、福住地区の移住コーディネーターの役割も担っています。
【Local PR Plan 安達さん】
「もともと大阪府高槻市の出身なんですけど、自然に近いところで暮らすほうが好きだし、楽天に勤めていた時も休日は田舎に行ったりして。
自分はいろいろやってきたんだけど、何にキャリアを積み上げていこうかなと考えたときに、まず地方に自分の能力を全部使って、ここを面白くすることに注力した方がいいんじゃないかと。」
丹波地域では今、アメリカのシリコンバレーをイメージした地域発のイノベーションプロジェクト「シリ丹バレー構想」の取り組みが進められています。
ことし8月には丹波県民局と関西経済連合会が連携協定を締結。起業家や移住者の支援をはじめ、人材の交流などを通して新しい産業の創出を後押しします。
「シリ丹バレー」の中心的メンバーでもある安達さんは、地元の生産者らをITを使ってサポートし、丹波をより魅力的な地域にしていきたいと話します。
【安達さん】
「今、福住エリアに35件ぐらい移住して開業された方が集まっていて、これを100件に増やして、それぞれのお店が年間1000人自力で集められるようにしたくて。
そうすると10万人がこの町を年間で歩くようになるので、これでひとつ経済圏ができて、ここのプロダクト(製品)が売れていくというのをやりたい。」
一方、老舗の企業も元気です。
丹波市青垣町にあるイクジウッド。大正14年から3代にわたって国産の木材を扱う会社です。製材業を中心に住宅建築やウッドデッキなどの製造のほか、古民家の再生も手がけています。
社長の足立成人さんは、このほど、丹波産の木材を個人でも楽しんでもらいたいと、新たな商品をつくりました。
クリやケヤキ、サクラなど、丹波産の広葉樹にガラスコーティング加工をほどこした木の器、「一人膳 八寸」です。
【イクジウッド 足立さん】
「製造業はどうしても受注生産ということで、注文いただいた商品を作って納材するというかたちの事業形態でしたので。
一般の人が使うようなものでお酒がおいしく飲める、そんなものを一回作って、売れるかは分からないけども世に出してみたいという思いはずっとあったという話をして。」
「一人膳 八寸」はことし1月に「丹波すぐれもの大賞」を受賞。現在はネットやイベントでの販売が中心ですが、さらに販路を拡大中です。
【足立さん】
「食べ物を食べる器として、丹波で採れた木の器に、例えば丹波栗ですとか黒豆を料理として載せて召し上がっていただいたらそこで丹波の話題になるし、食材と丹波の木材のつながりを意識していただけたらという思い。」
商品のPRは、滋賀県出身で8年前に移住してきた恒松さんの担当です。地域の魅力を発信する「ご近所」という会社に在籍しながら、週に1回、足立さんの会社で働いています。
【恒松智子さん】
「私としてもすごく楽しくさせてもらっています。特に週1回来るので、片方の足をイクジウッドさんに入れて、もう片方の足は自分の会社に入っている状態なんですけど、それが逆にバランスよくやれてて。
自分の会社で持っているネットワークをイクジウッドさんにもうまく活用できるところが殉難な働き方の良さかなと思います。」
足立さんは、青垣町佐治で空き家の活用を推進するNPOにも参加しています。
築100年以上の古民家を改修した衣川會舘は、地域の交流拠点やシェアオフィスとして活用されています。
【NPO法人 佐治倶楽部代表理事 出町慎さん】
「移住して来ている方と地元の方の垣根があまりないような感じがします。
移住される方も増えてきているし、15年前ぐらいから関わり続けている学生なんかも卒業して家族と一緒に遊びに来てくれたりとか、そういうようなことも年々増えてきているので。
地域の方と一緒になって、こつこつとやっていることが少しずつ成果出てきている感じ。」
それぞれの技術や特性をいかしながら、連携し、地域の新たな魅力をつくりだす「シリ丹バレー」。今後の展開にも注目が集まります。