神戸市垂水区のキャンプ場。スマートフォンで撮影を始める女性がいます。今岡春(いまおか・はじめ)さんです。
【春さん】
めちゃくちゃ小さいときに家族が一緒にキャンプ連れて行ってくれて、その記憶もあってキャンプ動画をYouTubeに上げている人を見て、自分もやってみようという感じで始めた。
今岡さんは兵庫県内のキャンプ場を巡り、その様子をYouTubeで配信するユーチューバーです。
チャンネル名は自らの名前をもじり、フランス語で「はじまり」を意味する「こまんすまん」。3年半前から活動を始め、登録者数はおよそ4万人です。
【春さん】
自然の中で食べるご飯がめちゃくちゃおいしかったりとか、焚火に癒されたりとか、鳥のさえずりとか聴きながら寝たりとか、そういうところがすごく好き。
慣れた手つきで素早くテントを張る春さん。
【春さん】
完成です。いまだに正解が分からないところももしかしたらキャンプの良いところなのかもしれない。
その後もスマホを片手に、食事を作ったり薪を割ったりして自然の中でのキャンプを満喫しました。
春さんの自宅を訪れると、自分の部屋で動画の編集作業を行っていました。文章を書くことが好きなこともあり、出演時ほとんど話すことはなく、字幕でキャンプを紹介しています。
【春さん】
こんなことやったなっていう、思い出しながら、楽しかったなとか思う感じ。また次何しようかなとか色々考えながらやってます。
-工夫しているところは?
動画でしゃべることがほとんどないので、いかに言葉、一文で分かりやすく伝えられるかということを工夫してやってます。
キャンプユーチューバーとして順風満帆に見える春さん。しかし、ユーチューバーとして活動すると決めるまでには、ある苦悩がありました。
春さんは高校卒業後、薬学を学ぶため神戸市内の大学に入学。成績に問題はなかったものの、薬学部を選んだことに疑問を持ち始めます。
【春さん】
薬学部なんとなく行って、そこからなんとなくで勉強してきてたので、薬剤師というものに魅力は感じていたんですけど、単位はぎりぎりで取って学年上がって、ってしていく中で「しんどい」って。
友達といるのは楽しかったけれど、勉強をやるたびに、自分ができないっていうことに目を向けていくのがしんどさとかはありました。
自分がやりたいことは何なのか―春さんの不安は次第に大きくなり、大学を続けることへの迷いから心に不調をきたし病院に通うようになります。
春さんの母親は、娘の姿を見てある後悔を感じたと話します。
【春さんの母】
親のわがままみたいな部分もあって、安定した仕事を選んでほしいっていう気持ちがあって積極的に薬学部を受けるように勧めた記憶があります。ちょっと責任を感じている部分もあります。
気持ちが落ち込んだ春さんを元気づけたのは、大好きなキャンプでした。
【春さん】
やっぱり楽しいですね。ごまかしごまかしで(勉強を)やってきてた中で、YouTubeをちゃんとやりたいか、それか薬学部で勉強するかどうしようと思って悩んだ結果、4年生になったら忙しくなるのも分かっていたので結局辞めたっていう流れ。
春さんはことし3月大学を中退し、在学中から始めていたYouTubeチャンネルで、これまで3年間通っていた大学を辞めることを報告しました。
【春さん】
私こまんすまん、大学を辞めました。自分にはできなかったことをできる人に憧れがある。できないっていうのを認めて次に行った方が良いとも思って。(ことし4月のYouTube配信)
すると、視聴者からは次々と応援コメントが寄せられました。
本格的にユーチューバーとして活動していくことを決意した春さん。母親もキャンプに付き添い、応援しています。
【春さんの母】
キャンプが面白くなってしまって。危ないからって言いながら自分が楽しみで付いてきてます。
春さんは、自分の興味の持てることを発信して、見ている人と共有していきたいと考えています。
【春さん】
みんな好きなことやった方が良いよとは思わないけれど、私が大学辞めたっていうことにもつながるけれど、自分がやりたい、楽しいと思えることじゃないとうまく続かないなというのがあるので、何度も考えることが大事だったのかなと思います。
「迷った時は自分の中で何度も考えて、後悔のない納得できる選択をしてほしい」
春さんが自身の体験をもとに、みんなに伝えたいメッセージです。