ジューシーな お肉を炙ったステーキ串に、お肉をたっっぷりと使った、ほっくほくなコロッケ。そして、ヘルシーだけど高タンパクなペットフード!これらは全て、山の恵「シカ」を活用したものなんです。
まずはキッチンカーの「SHIKASHIKA(シカシカ)」。
【フードトラック「SHIKASHIKA」 鵜沼明香里店長】
シカ肉料理しか出さないキッチンカーなので、ダジャレみたいな感じで「SHIKASHIKA」にしました。
ことし5月からシカ肉料理専門のキッチンカーをオープンした鵜沼明香里さん。兵庫や大阪などでキッチンカーを出店しています。
【鵜沼店長】
いまはウシ・トリ・ブタがメインで食べられていると思うんですけど、シカ肉って縄文時代から日本人が食べてきた、すごく歴史のあるお肉。
駆除はシカを殺すことがゴールになってしまう。利用というのはそこを起点に(殺したシカを)どうおいしく食べるかとかというものに派生する。
兵庫県によると、2020年の鳥獣による農林業被害は、およそ4億6500万円。その内、シカだけで全体のおよそ3割を占める被害を出しています。
害獣として嫌われ、「臭くて硬い」というイメージのあるシカを、「山の恵」として おいしく利用しようと考えたのがシカ肉料理専門のキッチンカーなのです。
【鵜沼店長】
表面を焼いて、低温調理でゆっくり約60℃で約1時間半火を通してこの状態になります。直火だとすごくパサパサしてしまうので、表面を焼いてから火を通すと水分が保たれる。
バーナーで炙り、香ばしさをプラス。そして、タマネギをたっぷり使った和風ダレをかければ完成です。
三重県から来たこちらの女性。初めてシカ肉を食べるという、そのお味は?
【三重県から―】
やわらかいです、おいしい。(シカ肉は)臭くて硬いイメージですけど、全然臭くなくておいしい。ものすごく柔らかい。
【鵜沼店長】
今後はシカ革や内蔵など、まだまだ未利用資源が多いので、「SHIKASHIKA」の存在が駆除と利用の懸け橋になればいいなと思っています。
続いては姫路市・香寺町。こちらで作っているのが、コロッケ。ある工夫を凝らしたシカ肉を使っている珍しいコロッケなんです。
【北恒屋みつばちプロジェクト 中西秀直 代表】
良い香りでおいしく本当に仕上がっています。おいしいです。
こちらは中西秀直さん。このシカ肉コロッケの発案者です。
普段はミツバチに関する保護活動や里山づくりを行っているので、近年の山の環境の変化を感じることが多いそうです。
【中西代表】
集落の方が芝刈りなどで山に入る機会が減り、山が荒れてきています。山に入らないということはシカ・イノシシの活動エリアが広がっている。畑の被害も多くなっている。
農家さんが被害で困っている、シカ肉を利用したコロッケというような形で活用できないかという相談を商工会女性部の方に持ちかけたわけです。
【姫路市商工会女性部 土山里美部長】
「シカ肉を使ってコロッケを」と聞いたときは「えぇ!?」と思ったが、でもちょっと面白いかと思って話に乗った。結構イケるんじゃないかと。
【姫路市在住 猟師 井口直美さん】こんにちは。きょうの分です。
【中西代表】ありがとうございます。
姫路市にあるシカ肉加工施設で処理された新鮮なお肉をコロッケに。そのシカ肉をミンチにして、ある工夫を凝らします。
【姫路市商工会女性部 土山美穂さん】
燻製します。揚げたては食べられるんですけど、冷めてからがやっぱり臭みが出た。(燻製すると)臭みが気にならなくなります。
【土山部長】食べやすいです。牛肉とかとは全然違います。
【土山美穂さん】シカ肉の臭みは感じないです。
この日は、町の子ども達に燻製シカ肉コロッケの試食をしてもらうことに。
【男の子】
めっちゃおいしい。外がカリッとしてて中がホクホクで、味はいつもの豚肉と変わらない。
【中西代表】
将来、鹿肉をコロッケだけに限らず、一般家庭の食材として広がって欲しい。子ども園や子ども食堂のメニューに取り上げてもらうことができればいいかなと思ってるんです。
シカ肉の有効活用は他にも。
【NPO法人 cambio(カンビオ)後藤高広理事長】
朝、捕獲されたものを持って来ていただいています。
冷蔵庫で鮮度を保ちながら保存、まさに「24時間のシカポスト」。
ここは多可町のNPO法人「cambio(カンビオ)」が運営する、シカ肉を使ったペットフード製造場。
【後藤理事長】
シカは添加物のあるものを食べていない、非常にオーガニックな食材。高タンパク低カロリー。
そのシカ肉をうまく使って国産のペットフードを作りたいと思いまして、研究をして今作っております。
農作物を食べてしまう「シカ」だからこそ。ヘルシーでいて栄養素もあるペットフードにして活用しています。
材料となるシカは、地元の猟師が捕獲して 持ち込んだもの。カメラの記録と猟師が記入した伝票を照らし合わせて各自治体へ報告。捕獲数の把握や、報酬の支払いに役立ています。
まさしく24時間、自由に搬入できる「無人シカポスト」なんです。
多可町のシカ捕獲数は年間およそ400頭。その内、およそ300頭を埋めたり焼却したりして処分していました。
しかし、施設の利用者が増え、多可町の焼却処分費用は5分の1以下に減ったといいます。
理事長の後藤さんは、このような「無人シカポスト」を増やそうと計画しています。
【後藤理事長】
(増やした無人シカポストから)冷凍にした個体をここまで搬入、まとめて搬入してもらうことで運送のコストなどを軽減しております。
特殊技術で解凍して、良い状態のシカ肉として使おうと実現化中。