児童養護施設を退所した子どもたちへ 「職親」という支援

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特集です。
皆さんは「職親」という言葉を知っていますか。
インターネットで「職親」を検索すると、刑務所出所者などを支える企業や知的障害者への自立支援などといった情報が出てきますが、きょう、お伝えするのは、児童養護施設を退所した子どもへの新たな取り組みです。

児童養護施設で幼少期を過ごし、企業との出会いで人生が変わった男性と、「職親」の制度確立に向けて奮闘する女性の思いを取材しました。

播磨地域で3つの店舗を構える精肉店・大浦ミート。
本店の店長を務めるのは、牧野幹人さんです。
中学を卒業後に働き始め、ことしで23年になります。

「このお店のお肉の管理をしています、全般的に。(肉を)切るだけではなくて若手の指導など店長として見るところは多いので、指導しながら自分もお肉を切っています」

牧野さんは3歳のころ、父親のギャンブル狂いが原因で、両親は離婚。
兄弟3人で児童養護施設に入ることになりました。

「普通の一般家庭のような扱いをしてくれて施設の運動会があったり、バザーがあったり共同生活ですけど楽しかったですね」

しかし、小学4年生のある日、父親に引き取られて山梨県に移り住んでから生活が一変します。

「学校も初めて転校して関西からの人なので言葉とかが変に聞こえたみたいで、それでちょっといじめじゃないですけど仲間外れにされたりとかもありました」

「アルバイトをしてくれと父親に言われて言われるがまましていたんですけど、毎朝、夜中3時に起きるのがつらくて」

牧野さんは小学4年生ながら、2人の弟と共に新聞配達のアルバイトをさせられますが、
貯めたお金は父親がギャンブルに使い込み、厳しい生活が続きました。


その後、兵庫県に戻ってきてからも生活は安定せず、兄弟3人でスーパーの試食コーナーなどでなんとか飢えをしのいでいたと言います。

「(父親は)すぐに頭にくる人で、どうしてもすぐ暴力が出てしまうので それが僕だけにではなくて弟もみんなにだったので、中学生になったときくらいから早く自分の力で何とかしたいという気持ちになりましたね」

中学卒業後、高校進学という選択は難しく、住み込みで働ける場所を探していたところ、大浦ミートに出会いました。
「働き始めはやっぱりすごい朝が弱くて寝坊はしょっちゅうするし、社会にちゃんと出て仕事をするというのが全然違いました なめてましたね」

当時の社長・大浦正彦さんは、牧野さんを見捨てることなく、365日、仕事はもちろん、食事や生活、お金の管理まで家族同然で接しました。
牧野さんの成長を近くで見守ってきた正彦さんの息子で、現在の代表取締役社長・大浦達也さんは、こう振り返ります。

「すごく成長してくれたなというのが1番で、来たときからそんなにしゃべるタイプではなかったので 物静かなタイプだったんですけど、すごい下の子らもいまは崇拝まではいかないですけど頼りにしています」

大浦ミートのように仕事と私生活の両面をサポートする企業を「職親」と名付け、いま、制度確立に向け、取り組みが始まっています。

生活雑貨のネット販売を行うアイセレクトの代表取締役・水野和美さん。
15年前に始めた児童養護施設のボランティアで、退所後の子どもたちの現状を知り、支援について
考えるようになりました。

「お金がない、頼る大人がいない、もう死ぬか生きるかのときにはやはり食べ物を盗ってしまう。そういうふうな現状、もしくは頼る大人がいなくて命を絶ってしまう子ども。
でもやっぱりその子たちだって自立さえできれば立派な若者になるわけなのでそのためにも職親が必要だなと思って動き出しました」

児童養護施設では、原則18歳までと年齢制限が設けられていて、半数以上が就職・就労の道へ進みますが、長くは続かず、行方が分からなくなるなど、退所後の支援が行き届いていないのが現状です。
水野さんはいま「職親制度」の必要性を広めるため、まずは子どもたちの実態を知ってもらいたいと
さまざまな場所で講演会を行っています。

この日の講演会には、大浦ミートの牧野さんを招いて、支援の重要性を訴えました。

講演会には、牧野さんのいた児童養護施設の施設長も駆け付けました。
2人が顔を合わせるのは、およそ20年ぶりだといいます。

施設を出た子どもたちが明るい未来を描くために。

自分を支えてくれた存在、
「職親」のような新たな支援が欠かせないと感じています。

「僕はこの大浦ミートで働けたことによってプライベートまでご指導してもらえたので大丈夫だったんですけど、弟とかを見ていると全て自分でしないといけなかったので、頼れる存在がそばにいれるような環境が大事なのかなと思います」

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