◎コロナ禍が収まりつつあるのか?また拡大するのか?
緊急事態宣言やまん延防止措置が繰り返し発出され、市民生活は大きな影響を受けていたが、初夏を前に様子が変わってきた。日々の感染者数は下げ止まりの様相だが、屋外でのマスク着用が解除され、飲食店での会食人数の緩和、イベント参加人数の上限撤廃などが示された。海外からの観光客の入国制限も徐々に緩和されていくようだ。
そんな折、かねてより気になっていた芸術イベントで、「瀬戸内国際芸術祭」に行くことになった。瀬戸内海の島々で開催するのはいいが、どうやって見て回るのか、どれほどの日程が必要なのかと、見送る理由をまず考えていた自分がいたのだ。
訪れたのは5月半ばの春会期終了間際だったので、夏会期が始まる前に記事にするるつもりでいたが、新型コロナの新規感染者があっという間に全国に拡大、第7波に入った。引き続き感染対策の徹底は要請するが、緊急事態宣言やまん延防止措置への経済活動を制限することはしないということだ。旅行や観光などには影響しないことを願いつつ、記事を上げることにした。
◎瀬戸内国際芸術祭って
3年毎に開催されるトリエンナーレであるこの芸術祭は2010年が第1回で今回が5回目。初回のみ7月から10月までの通期だったが、2回目の2013年からは春、夏、秋の3期となっている。瀬戸内の自然と見どころと合わせて春、夏、秋でたっぷり堪能できるということだ。
前回は2019年だからコロナ禍の影響は受けなかったのですねと、香川県の瀬戸内国際芸術祭担当の合田健さんに尋ねた。
「海外の作家さんが来日できなかったり、作品が届かなかったり、開催に間に合わなかったものもあったのです」と残念そうな顔をしたが、「しかし、8月から始まる夏の会期にはすべて間に合う予定です」と笑顔で答えた。
以前の展示をそのまま残しているもの、補修や拡張をかさね前回よりも成長している作品もあるそうだ。 誰もが知っている高名な作家の作品を見ることができ、これまでの作家は200人を超え、そのうち3割以上は外国人となるそうだ。
◎岡山県の宇野港から瀬戸内海へ
1年を通じて温暖で、晴れの日が多い瀬戸内海なのだが、訪れた日は朝からの雨。ここでも雨男の伝説は覆ることはなかったのだが、午前中にズボンも靴もびしょびしょで、歩くと靴が鳴る始末。岡山県の宇野港から小豆島へ渡る連絡船は大揺れで、波しぶきが窓の高さを超えて流れていく。
宇野港の販売所で売っていた芸術祭公式お弁当「白桃を食べて育った桃鯛と瀬戸内パエリア弁当」。
それ自身がアートになった公式弁当は公式ショップの他に、会場となる各島でも独自の弁当を販売している。それらを食べ比べるのも楽しそうだ。元々船に弱いのに、これほど大きく揺れていては悲惨なことになりかねない。到着まで1時間少々、早々と食べて寝るに限る。
「瀬戸内の島々に活力を取り戻し、瀬戸内海が地球上のすべての地域の『希望の海』となることを目指して開催する」と実行委員会が記している。瀬戸内は太古の昔から重要な海路であり、大陸との交流はもちろん人や物を乗せた多くの船が行き交った。それゆえ海賊の本拠となった島も点在したようだ。交通手段が船から鉄道や車、飛行機へと移ることで瀬戸内が寂しくなったのは間違いない。“モノ”ではなくアートで人を呼び込むことで、瀬戸内の復権を目指しているのか。
この芸術祭は地域の中で開催、展示されている。公園や公共のスペースだけでなく、空き家や空き地、それも住宅地の中や路地の奥にもある。地元の人たちの協力なしには実施できない。展示に関しても多くのボランティアが関わっているそうだ。
◎「島のおじいさんおばあさんの笑顔を見たい。」
順序が入れ替わってしまったが、JR宇野駅に到着するところからこの芸術祭は始まる。チラシやパンフレットを手に取り、今から始まるものを確認する。
駅舎を出てまず目に入るのは駅舎。右から見ても左から見ても傾いているようだが。
そして新しいスタイルの駐輪場?立て掛けられた自転車が並ぶ。
天井から流れ落ちる「塩」。古くから塩田が広がった地域でもあり、塩には思い入れが深い。この作品ではこの塩をスプーンで受け取り、ビンに詰めて購入できるようだ。
数十年前に閉院した「三宅医院」は昭和40年ごろに普通に見られた建物で、取り壊されずに残っている。1階には器具が残された診察室や待合室があり、2階には病室が並んでいる。ここで展開されるのはムニール・ファトミさんの「実話に基づく」。モロッコにある同様の建物が壊されていく姿をプロジェクターで各部屋の中に映しだしている。人の生死を見続けて使われなくなった古い病院。そこで感じるものは。
周辺には他に数点、港に因んだ作品が展示されていた。
◎船に揺られて着いたのが小豆島の土庄港
この芸術祭は瀬戸内の大小12の島と2つの港が会場となっている。
豊島、直島、本島、女木島、男木島、高見島、粟島、伊吹島、沙弥島、大島、犬島、小豆島。
港は岡山県の宇野港と香川県の高松港。
島の中で最も大きいのが小豆島。数年前、家族と乗ったフェリーは福田港に着いたが、今回は小豆島の西部にある土庄港。世界一狭い海峡としてギネス登録されている土渕海峡があった。
ここでまず入り込むのは「迷路の町」。その名の通り、細い通路が迷路のようになった町で、観光客に人気があるようだ。この迷路の中にも作品がある。
旧土庄町役場周辺に点在するのが「立入禁止」。
このミラーの右奥にぶら下がっているのが作品。あちらこちら展示されているものを探すのも鑑賞方法の一つ。全部で14作品がある。
路地の先にある空き地に立つ展示物。木製のものと鉄板のもの。
雨の降る中、大勢の見学者が傘を差しながらぐるぐると周囲を回ります。
遠くから来られたファンが多い。
空き家を改装し、中を巡る作品が多くある。
空き地にそびえ立つのは空洞の樹木。木にアルミ板をあてがい叩き延ばしたものを組み立てて樹木の形にしたという。展示が終わったらカンボジアに送り返されるという。
◎小豆島の中央部から南へ延びた三都半島へ
石と木と鉄骨で組み上げられた巨大な作品「ダイダラウルトラボウ」。
ウルトラマンの顔のようにも見える。
使われなくなった船の生まれ変わり、2回目の生き方。
大きな彫刻作品。
海からの音を収音装置で取り込み、柱で組んだ建屋の中で再生する。
◎香川県の高松港へ移動するため、もう一度土庄港へ
オリーブの王冠。瀬戸内の復興に贈りたい。
金属でできた彫刻作品は水が溶ける様子を表現している。
土庄港から高速艇に乗って高松港へ移動します。雨はまだ降り続いていますが、波は静かにしてくれているようです。ありがたい。
高松港フェリーターミナルに到着すると、紙で作られたカメやイルカが泳ぐ。
コシノジュンコさんの大きな作品。
瀬戸内国際芸術祭公式グッズもいろいろ揃っており、多くの観光客がそれぞれ手に取り購入していた。
多くの作品が出品されている瀬戸内国際芸術祭。
12の島と岡山県の宇野港、香川県の高松港の作品を見て回るのは相当な覚悟と時間が必要となる。青い空とのコントラストでさらに映える作品もあったので、荒天で訪れたことが残念だったが、今回はそのエッセンスだけをいただき、次の機会への記憶としておこう。
今回訪れた島は小豆島だけ。他の11の島にもたくさんの作品が展示されている。
ここでもう一度、瀬戸内国際芸術祭2022のおさらいを。
私が参加した春会期すでに終了し、次は夏会期で8月5日(金)から9月4日(日)、秋会期は9月29日(木)から11月6日(日)となっている。
さて明日はJR四国の列車に乗っておなじみの旅へと向かう。
後半へ続く・・・