ダウン症のマリンバ奏者 周囲に支えられながら歩む音楽の道

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兵庫県猪名川町にダウン症のマリンバ奏者がいます。
自分を支えてくれる家族や職場、それに地域への恩返しとして続ける男性の活動を取材しました。

兵庫県猪名川町に住む、ダウン症の多田駿介さん(24)。多田さんは14年間取り組み続けてきたことがあります。それが、マリンバの演奏です。

覚えることが苦手なため、ひとつの曲を覚えるのに半年、長い時は1年ほどかかることもあるといいます。

(多田さん)
「剣の舞」「アメリカン・パトロール」「夏の思い出」とか「紅葉」とかもやっています。忘れるのもすぐですし、覚えてないんですけど「冬景色」とか「早春賦」とかも。完全にもう忘れてしまっているのは「赤とんぼ」

生後まもなくダウン症と診断された多田さん。母の千景さんは、当時をこう振り返ります。

(母・千景さん)
この子はこの先どう暮らして成長していくか、やっぱり親が先に死ぬよねっていう不安でとにかく何もかも不安だった。

自分を表現することが苦手な息子に、気持ちをぶつけるものが必要だと、10歳の時にマリンバを習わせ始めました。

地道に練習を重ねて、レパートリーは20曲以上に。演奏の依頼を受ければ駆け付け、姉妹都市との交流プログラムでは、オーストラリアで演奏したこともあります。

(多田さん)
マリンバをやっていることを皆さんに知ってもらって、外国でも国内でもこれからも演奏したい。

多田さんには、もうひとつの夢があります。それは、介護士になること。目標に向かって2年前から町内の福祉施設で働いています。

(利用者の女性)
優しい方だよ。おばあさんだから嫌だなんてこと言わないから。どなたにでも親切にしてらっしゃる。

多田さんは職場でも利用者に向けて時々コンサートを開いています。

(利用者の女性)宝塚の歌(を演奏してほしい)。「おお宝塚」。
(多田さん)それはね、あるにはあるけど…。
(利用者の女性)弾けません?
(多田さん)先生に習ってまたね、練習しときます。

一緒に働くスタッフも多田さんの活動を応援しています。

(多田さんの上司)
介護施設なので私たちも高齢者に対して「できることを奪わない介護をしよう」「自立支援の介護をしよう」というのと同じ考えで、障害者の方にもできることを奪わずに社会の中で頑張っていける場所を提供したい。
できることはたくさんあって、それを生かしてあげたい。そこに価値があると思っているので、どんどん見つけていけたら。

自宅のリビングには、いつも多田さんが練習する音色が響いています。

(千景さん)
間違っていたら飛んで行くんですけど、嫌がりますね。

子どもが何歳になっても気になるのが親心です。

(千景さん)
どうしたん急に?ドレミの歌を4本ばちでやってみようと思ったん?でもそれまだ先生に教えてもらってないやん。
(多田さん)
教えてもらってないけどアレンジしてみました。
(千景さん)
かっこいいことしようとしたやろ、あんた。普通に上手に練習できるようにしよう。

(千景さん)「あっち行って」って思っても言えへんの?
(多田さん)心ではあるけど声は出さんだけ。

(千景さん)
こういう音を聞きいていると「あぁ大きくなったなぁ」「いつまでも心配ばっかりじゃなくて彼は彼なりの時間があるんだなぁ」とかというのは、こういうときに感じながらプチ幸せな気分です。

多田さんは地域にもかかわりたいと、仕事が休みの日の朝には小学校の通学路に立ち、登校の見守り活動に参加しています。

自分を支えてくれる周りの人たちへのささやかなお返しです。

(多田さん)
挨拶をしてくれるのが勇気づけられるので、それがうれしいし楽しい。

やりたいことに挑戦させてくれる家族、職場、地域の人たち。

(多田さん)
皆さんに支えていただいているのはうれしいですし、僕から逆にマリンバで恩返ししたい。

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