神戸市兵庫区にある商業ビルの防火設備を巡って入居する映画館と神戸市の意見が対立しています。争点は地上か、地下か―。新開地が誇る名画座がいま、揺れています。
パルシネマしんこうえん。築50年の商業ビル「ミナエンタウン」の一角に入居しています。現在、3代目の小山岳志さんが支配人を務めています。
登記上は地上とされるパルシネマですが、2020年12月に兵庫消防署から「地下街」であるとしてスプリンクラーなどの防火設備の改修を求められました。
(パルシネマ支配人 小山岳志さん)
当館にはスプリンクラーではなくて屋内消火栓が設置されていた。それに見合った消火設備をつけて安心してお客様に映画をご鑑賞いただくことが一番と思っていた。
1971年の創業当初から非常口の確保や屋内消火栓の設置など劇場に求められる防火基準に沿った対応を取ってきたパルシネマ。改修命令の期限が6月8日に迫る中、小山さんは神戸市を相手取り訴えを起こしました。
(訴訟を担当する大野浩正弁護士)
一番の争点はパルシネマが地下街に当たるかどうか。
パルシネマは地上か、地下か?
煙がとどまりやすく避難や救助・消火活動がしにくいという特性を持つ地下街は、地上よりも厳しい防火基準が求められます。
(大野弁護士)
閉鎖空間であるがゆえに、ひとたび火災が起こったら人々の生命・身体・財産に重大な影響を及ぼしかねないということで地下街は消防法上厳しく規制される。パルシネマの建物は厳しい規制に該当するような閉鎖的な空間ではないと考えています。
パルシネマの出入り口は道路はほぼ同じ高さ、劇場内には非常口が2か所あり、扉を開けるとすぐに外に出ることができる構造となっています。
(大野弁護士)
消防法の目的は火災の予防。火災が起こった時の避難をスムーズにする。このことに関してパルシネマも消防の方々と同調して安全・防火体制を確立していくという気であることは疑いがない。
しかし、防火設備の改修命令を出した兵庫消防署は建築当時から「地下」であるとして、6月8日までに防火設備を改修するように求めています。
(小山さん)
何かが起きた時にこれだけのスピードで外に案内できます、避難できますというのを伝える。安心してもらって映画をご覧いただく。そこに尽きると思う。
今回の命令をきっかけに避難経路を観客に改めて伝えようと、上映時間の合間に自ら説明に立つことにしました。
説明を聞いた観客は「図で示されているより具体的なのでいざというとき心強い」「道へすぐに逃げられるとは知らなかった。劇場の横は非常口そのものだ」などと話していました。
親子3代、50年間守り続けた映画館。最も大切なのは信頼して訪れてくれるお客さんの安全です。
(小山さん)
お客様が安全だと思ってこちらが説明して認識していただいて、それで初めて心置きなく映画に集中できると思っていますので、引き続き今後も不安に思われる方がいたらしっかりと案内して納得していただけたら嬉しい。