心の準備を整えて挑んだ、初めての美容皮膚科は拍子抜けするほどあっさりしていた。
「私ね、ここにあったシミとっちゃったんですよ」という友だちの告白に感化され、美容皮膚科に行った。
「ここのところ、ずっと気になってたんで、思い切ってレーザーやってみたんですよ」と指さされた部分は、そこにどんなサイズのシミがあったのか想像できないくらいにきれいになっていた。
「えーっ、どこの病院に行ったの?」
「どうやって決めたの?」
「どんな感じだった?」
前々からすごく興味があったので、体験者には聞いてみたいことが山ほどある。矢継ぎ早に質問を繰り返した。
美容皮膚科と検索すると、ものすごい数がヒットする。どこのホームページを見ても同じような感じなので、どこに行けばいいのか調べれば調べるほど判断できなくなっていたのだ。
決めるなら、友だちの口コミが一番信頼できる。そこで、3件の病院を渡り歩いたという彼女から、一番のおすすめ病院を教えてもらい行くことにした。
「ここは施術が早くてリーズナブルですけど、説明が下手なんですよね。だから、初めての方にはおすすめしないです。」
「この病院は予約できないので、おすすめは朝一番です。」
「平日は主婦の人が多いので、お昼前になると、混んできますよ。」
彼女もシミ取り経験者として、いろんな情報を惜しげも無く教えてくれる。後日彼女のアドバイスどおり、初心者にも優しい病院に決めて、朝一番乗り込んでいった。
施術されているときは、ゴムでパチパチされてるみたいな痛みがあるらしいが、ここはそれを緩和するための薬が処方されると言うのもありがたい。
家族にも「シミをとってくる!」と宣言して心の準備も万全だ。
名前を呼ばれ、初診が始まる。「ここのシミが気になってるんです。」と伝えると先生は無言で顔をじーっとのぞきこみ、こちらも妙な気恥ずかしさが湧き上がる。
こんなに長い時間、顔をのぞき込まれたことなど、もう何十年もないと思う。
「何か言ってくれー」と息を詰めていた私に、「あーこれ、肝斑ですね」「ここ、こんな風になってるでしょ」と手鏡を渡され、ようやく説明がはじまった。
「薬で薄くなるタイプのシミなので、まずは薬を試してみましょう」
「3ヶ月ほど様子見ながら続けてみましょうね」
そして同年代ぐらいの方が、投薬前と投薬後ですっかり明るくきれいなお肌になっている写真などを何枚か見せてもらった。
「レーザーじゃなかった、ゴムのパチパチはないんだ」という安堵感と「すぐに何か変化が起こるわけではないんだ」という落胆した気持ちが同時にやってきた。
しばらくして、割と早い段階で毎食後薬を飲むことがめんどくさくなり、次回診察予定の日を過ぎても薬はたっぷり残ってしまった。
れでもなんとか続けていると、やはり1ヶ月ぐらいで薄くなってきたような感じがしてきた。
薬をもらいに行かなきゃと思っているうちに、1回目の緊急事態宣言があり、病院に行きそびれ1年ほどほったらかしにしている
間に薄くなりかけていたシミも存在感を示すようになってきた。
コロナ禍ではあったのだが、1回だけでフェイドアウトしてしまった病院は、少し敷居が高くなっているのだけどもう一度再チャレンジしようか、それとも違うところにしてみようか。
暖かくなってきて再び「なんとかしたい」気持ちもムクムクと芽生えてきている今日この頃なのだ。
■筆者プロフィール
広島県出身、神戸市在住。広告制作会社 有限会社ティーアンドエムで、営業・広告企画・プランニング・コピーライティングを担当。3つ子の母。ペットは、カメとコザクラインコ。最近、着物教室にも通い始めました。