■INACからオファー
元なでしこジャパンのMF川澄奈穂美(かわすみ・なほみ 34歳)が、古巣のINAC神戸レオネッサに期限付き移籍することが決まり、8月17日、記者会見が行われた。背番号は「36」に決まった。
川澄は神奈川県出身。日本体育大を卒業してINAC神戸に入団し、2008年から2016年まで(期限付き移籍時あり)在籍した。
この間、2011年のFIFA女子ワールドカップ優勝をはじめ、なでしこリーグ優勝3回、皇后杯優勝6回などに貢献した。その後、アメリカのプロリーグ(NWSL)でプレーし、現在は「スカイ・ブルーFC」に在籍している。
INAC神戸は川澄に今季初めに復帰オファーを出していたが、コロナ禍でNWSLが7月で今季終了。
出場機会を得るため川澄がINACのオファーを受け、今年末までのレンタル移籍が決まった。川澄は7月31日に帰国し、14日間、実家で待機した。PCR検査は陰性で、早ければ次節8月23日の浦和戦(ノエビアスタジアム神戸)から出場できるという。 記者会見の川澄の発言要旨は以下の通り。
■熱意が伝わった
「きょうは多くの方にお集まりいただき大変うれしく思っております。5人ぐらい来て下さったら有り難いなと思っていたので(笑)。タイトルを取ることを強く思って入団しました。 (背番号について―) コアなファンの方はご存じでしょうが、初めて日本代表で付けたのが「36」だった。自分は「9」に強いこだわりをもっているが、田中美南選手が付けているので、「シアトル・レインFC」でも付けた「36」に決めた。 来季もスカイブルーとの契約は残っている。コロナでNWSLが7月で終わったが、自分としてはコンディションも良かったし、試合出場機会を確保したいと思って、今季初めにオファーを下さったINACが頭に浮かんだ。受け入れへのINACの熱意が伝わってきたので、このチームでプレーしたいなと思いました。 私はINACに入って先輩方に引っ張って頂いて成長して来れた。INACは上手い選手が多いがそれだけで終わってほしくない。自分は上手い選手ではないが、そこをどう補ってきたかを伝えたい」
■女子サッカーのステップアップ
「日本からは“アメリカは感染者多いけど大丈夫?”という連絡をたくさん頂いた。アメリカでは3月中旬から自宅待機が始まった。2カ月半は本当に誰とも会わず、何かあるとオンラインでミーティングをした。トレーニングも一人でやっていた。スーパーに1週間に1回行ったが、入店制限が徹底されていたので不安を覚えることはなかった。 (なでしこリーグの現状は―) アメリカはプロリーグ。日本はまだアマチュアリーグ。どうしてもアメリカと比べてしまうが、サッカーのレベルだけでなく、環境や取り組む姿勢など、とんでもなく前を行っている。広報やチームの見せ方、発信の仕方もアメリカはプロだなと感じる。しかし日本にも世界で上を目指せる人材はいるので、選手・スタッフ・協会・リーグ、全員で力を合わせてステップアップしてほしい。今までは外野だったが、きょうからは中の人間として発信していきたい」
■神戸に愛着ある
「大学を卒業してトップリーグで初めて入ったのがINACだったので、当然、愛着はある。アメリカにいても、オフには必ず神戸に来るぐらいこの街が大好きなので、4カ月ほどだが、神戸で美味しいものを食べ尽くそうかなと思ってます(笑)。神戸ビーフは絶対食べたい。 (日本代表について―) 個人的な意見だが、来年オリンピックができるかは正直、難しいのではないか。しかし現役である以上は常に代表を目指しています。 (サポーターへメッセージを―) ただいま帰って来ました。皆さんも暖かく迎えて下さってとても嬉しいです。皆さんとまた一緒に戦えることが楽しみです。必ずタイトル、一緒に取りましょう!」
■タイトル奪取なるか
INAC神戸は2017年から3年連続で無冠(リーグ戦、カップ戦、皇后杯)に終わった。今季は4年連続リーグ得点王の田中美南らを加えて戦力を増強し、リーグ戦は3勝2分、勝点11で3位につけている。チーム創設20年目の今季、川澄の加入でタイトル奪回へ弾みをつけるか。
(浮田信明)