町を、そして暮らしを彩るさまざまな音…
あなたもぜひ耳を澄ましてください。
そこに新たな発見や、感動があることでしょう…
【演奏】
宮島哉行(みやじまさいこう)
安永早絵子(やすながさえこ)
明石海峡に面した明石市は、漁業が盛んな町として知られている。
そんな町の名物が60年もの歴史を誇る「明石焼き」
口の中でふわりととろける食感を出すのに欠かせないのが、銅で作った専用の鍋だ。
明石でただ一人、銅鍋を打つ職人がいる。
父親の仕事を継いで50年、手打ちにこだわる技の匠だ。
今日も明石の町に響く銅鍋を打つ木槌の音
それは、いつまでも残していきたい匠の音。
日本の主要な港の一つ神戸港。
慶応3年の開港以来、貿易港として、また日本三大旅客港のひとつとして発展してきた。
港町神戸を代表する人気の観光スポット神戸港の夏に欠かせない風物詩がある。
「みなと海上花火」だ。
夜空をこがす大輪の花火、響き渡る音に、毎年人々は魅了される。
海上花火はまさに港町神戸ならではの光と音のページェント。
神戸の夏を華やかに彩る・・・
明治29年エジソンが発明した活動写真の装置が神戸に上陸。
日本で初めて上映が行われ以来映画の町とよばれるようになった神戸。
その美しい町並みが、国内外の監督たちに愛され、数多くの作品のロケ地ともなってきた。
映画の町を象徴する音が、「神戸映画資料館」で今も活躍する映写機の音だ。
それは、遠い記憶を呼び覚ましてくれる懐かしの音・・・
映画の町によく似合う。
神戸の北にそびえる六甲山
その山懐にいだかれて、とどろき落ちる滝がある。
華厳の滝、那智の滝とともに日本三大神滝のひとつに数えられる布引の滝だ。
水の流れが、まるで白い布を流したように見えることから名づけられたという。
静寂の中に響く滝の音、清く澄んだ水の流れ・・・
大都会の真ん中に、独特の存在感を見せる神戸南京町。
中国風の意匠、あふれる色彩。
異国情緒ただよう神戸の中でも、ひときわ異彩を放っている。
神戸屈指のグルメタウンとしても知られているこの町に、なくてはならない音がある。
強い炎で一気に仕上げる中国料理ならではの調理の音だ。
香ばしい香りに満たされた南京町は、エキゾチックで、どこまでもパワフル
ここは、美味し音に彩られた都会の迷宮・・・
今年開園60周年を迎えた神戸市立王子動物園。
ここには、ジャイアントパンダやジャガー、アムールヒョウなどの希少動物をはじめ、およそ150種800点もの動物たちが暮らしている。
入り口を入るとまず出迎えてくれるのがフラミンゴの群れだ。
優美な姿とはうらはらに、躍動感に満ちた鳴き声は、動物園を訪れる人々のこころを鼓舞するかのようだ。
園内に響き渡るフラミンゴの声、命を育む動物園ならではの音。
昔からおしゃれな町と呼ばれてきた神戸は、今もトレンドを発信し続ける
まさにファッションの町だ。
神戸のファッション産業を代表するひとつが、日本一の生産量を誇る靴。
長田の町には今日も、くつ作りの音が響く。
靴作りの音は、神戸ならではのまさにこだわりの音・・・
日本の主要な国際貿易港の一つ神戸港
海外からの大型船をはじめ、観光クルーズ船や、小型船など毎日多くの船が行き交う。
空を舞うウミネコの声
なぜか郷愁を誘う汽笛の音
行き交う船が波を切る音
神戸港はさまざまな音の競演に心踊る、まさにステージだ。
大正14年に開業した摩耶ケーブルは、かつて山頂に鎮座した空海ゆかりの寺への足として利用された。
今、カラフルな車両を緑の山へといざなうのは鋼鉄製の太いケーブル。
山々に響くケーブルを巻き上げる音・・・まるで山の鼓動のように聞こえる。
日本を代表する名湯、有馬温泉。
その歴史は古く、神代の昔に発見されたといわれ、太閤秀吉が愛した湯としても知られている。
関西の奥座敷とも呼ばれる町には、風情ある家並みが今も続いている。
この町を彩る源泉の音、それはまさに大地の響き・・・癒しの音
幕末から明治にかけて丹波地方で盛んに織られていた丹波布。
大正時代に入って姿を消した丹波布を蘇らせたのが足立康子さん。
美しい縞柄に魅せられ、60年以上も丹波布の復興に力を注ぎ続けている。
のどかな町に響く機織の音。幻の布は未来へと確かに受け継がれている。
悠久の歴史を誇る兵庫県三田市。
美しい自然を背景に、豊かな時を刻んできたこの町は近年、神戸や大阪のベッドタウンとして発展。
そんな新しい住宅街の一角に、ロールケーキが有名な店がある。
オーナーは、数々の菓子コンクールで優勝、世界からも賞賛されるパティシエ小山進さん。
職人にはリズムがあると語る。菓子作りの音は、まさに甘き調べ。
山陽と山陰を結ぶ交通の要衝として栄えていた加西市。
今は静かに時を刻むこの街に時折響く音がある。
加西市の北条町駅から、小野市の粟生駅を結ぶローカル線北条鉄道の音だ。
ガタンゴトンという車輪の音、警笛。地元の人はもちろん、旅する者にも「おかえりなさい」といっているよう聞こえるローカル線の響き。
なんともなつかしくて、あたたかくて、心がほどけていくようだ。
姫路市の沖合い18㎞に浮かぶ家島はマリンスポーツの拠点として知られている。
夏、若者たちがシーカヤックに挑戦していた。
海面近くを、すべるように行くシーカヤックは、海との一体感がいちばんの魅力だという。
身体いっぱいに、風を感じて…そして、海を渡る風になる…
豊かな自然に包まれた新温泉町。この町で完全無農薬の農法にこだわってきた家族がいる。
江戸時代から農業を営んできたという谷口さん一家だ。
より自然であることにこだわり、選んだのがアイガモ農法だった。
にぎやかな鳴き声を響かせながら田んぼの雑草や害虫を食べるアイガモたちは、小さな命が命を育む、まさに田んぼの守り神だ。
戦国末期に起こった三木合戦で知られる三木市は昔から金物の町としても全国的に有名だ。
数ある金物の中でも、この町が誇るのが、江戸時代からの技と、技法を受け継ぐ播州三木内刃物。
この町で伝統の製法を守り続けている鍛冶屋がある。灼熱の工房から聞こえてくる鎚を打つ響き。
曽祖父から祖父へ、父へ、そして息子へ受け継がれてきた匠の音だ。
コウノトリの郷(さと)として知られている豊岡市。
たんぼや畑でエサを食み、巣塔で子育てをしたり、大空を舞うコウノトリの姿を見ることができる。
野生のコウノトリを蘇らせるために様々な取り組みを行ってきた豊岡に、軽やかに響く音がクラッタリング。
コウノトリがくちばしを鳴らす音で、求愛やコミュニケーションのしるしだという。
クラッタリングは再び豊岡の空へと還ってきたコウノトリの喜びの歌に聞こえる。
日本海に面した香美町の香住。漁業の町として知られ、特にこのシーズン、町はカニ一色に染まる。
カニといえば松葉ガニが有名だが、この町の自慢が香住ガニ、9月に漁が始まるベニズワイガニだ。
朝もまだ明け切らぬころ香住漁港では獲れたての香住ガニの仕分けが行われ、かねの合図で競りが始まる。
男たちの威勢のいいやりとりは漁業の町ならではの音。そして今日も荒波の日本海でカニ漁は続く。
神話の時代から続く悠久の歴史を誇る淡路島。
島の北に位置する淡路市に江戸末期から受け継がれてきた伝統産業がある。線香作りだ。
線香の生産高日本一を誇る町で、今も手作りにこだわる工場がある。
原料を混ぜる音、線香を切る音、揃える音・・・それは昔からこの町に響くなつかしの音。
線香作りにかける人々の技と誇りがその伝統を支えている。
緑豊かな丹波市で、アートに出会った。
森の中から切り出した一本の丸太を素材にチェーンソーを駆使して作る彫刻作品、チェーンソーアートだ。
木のぬくもりを感じさせるこのアートに魅せられたのが塚原吉智さん。
始めてからわずか3年で世界大会の決勝に進出したという。
爆音を轟かせるチェンソーからなぜこんなに繊細な作品が生まれるのだろう。
一本の丸太に命を吹き込む森のアーティストだ。
神戸市須磨区にある須磨海浜水族園。
雄大な海を再現した大水槽や、アマゾン川をテーマにしたパビリオンなどで、悠々と泳ぐ魚たちを
身近に見ることができる水族館はスマスイと呼ばれ神戸の人たちに愛されている。
様々な生き物たちの鳴き声も楽しい。
中でもおしゃべりなのがイルカたちだ。
軽やかなその声は、歌声にも聞こえる。
神戸港開港と同時に外国人の住居や通商の場として造りあげられた旧居留地。
今もレトロな洋館が建ち並び港町神戸に風情を添える。
このまちに毎夜響く音、それがバーテンダーがふるシェーカーの音。
色とりどりのカクテルに時を忘れて、おしゃれな港町神戸の夜に、酔いしれてみたい。
下町情緒が残る神戸市長田区
このまちで、80年以上の歴史を誇るのが丸五市場。
人情あふれる長田の台所として愛されてきたこの市場に響く音がある。
長田が誇るご当地グルメ「そば飯」を焼く音だ。
リズミカルな響きと、香ばしい香りに食欲をそそられる。
淡路島の沖合いに浮ぶ沼島は国生み伝説が残る島だ。
漁業が盛んなこの島が誇る夏の恵みそれがハモ。
旬を迎えるころ、この島を彩る音がある。
料理人たちが最高の技量を要するといわれるハモの骨切りの音だ。
ハモは沼島に限るとまで料理人に言わしめる夏の恵み。
職人の卓越した技が、その味をさらに引き立てる。
神戸市の中心から南に位置し、海上文化都市として知られる人工島ポートアイランド。
この島の小学校を彩る様々な音。すべてが軽やかに聞こえるのはどうしてだろう。
それはきっと、子どもたちの夢や希望が、いっぱい詰まっているから。
神戸市北区の山あいに佇む、小さな小学校。
140年もの歴史を誇り、神戸で唯一、木造の教室が残る。
放課後、静寂に沈む教室に響く、あたたかなヴァイオリンの音色。
長い歳月、子どもたちの成長を見守り続けてきた、この学び舎の優しさのように。