メッセの“Last Dance”

〈9/29 阪神 6-3 中日 (甲子園)〉

勝:ガルシア
敗:柳

甲子園のまっさらなマウンドにメッセが帰ってきた。
背番号54の大きな背中、少し久しぶりだったけど何も変わらない。
いつもと違うのは、これがメッセの引退登板ということだ。

沖縄キャンプでの木内アナのインタビューで「開幕投手になりたいですか?」の問いに、メッセの答えは
“hope not. I should be”
(なりたいんじゃない 絶対だ。)

メッセは日本での10年で、開幕投手になることに誇りを持っていたし、そしてそれを夢だとは語らない。「開幕投手になる」とはっきり言葉にした。
夢をつかむ人が、メッセと同じことを言うのを聞いてきた。
メッセに学ぶことは多かったが、これが一番だった。

グラウンドでは険しい顔をしても、ある年の沖縄キャンプで、カメラを持っている私のそばを通るとき、「ハイ!チーズ!」と自らおどけた表情を作ってくれたことがあった。
大きなメッセの姿が見えただけで固まってしまっていたので、せっかくピースしておどけてくれても、ただビックリして妙な愛想笑いを返すのが精一杯だったけど、あのときのメッセの笑顔は忘れない。

メッセが怒っていると哀しくなったし、メッセが喜んでいると嬉しくなった。
チームメイトにもファンにも慕われ、みんなの先生であり、父親のようであり、そして何より大切な仲間だ。
助っ人という枠などとっくに飛び越えた存在であり、かけがいのない選手。
タイガースのエースは、メッセだった。
来年の開幕投手がメッセじゃないなんて、タイガースにメッセがいないなんて、どうやって受け入れていいのかわからない。

先発したメッセに対する先頭バッターは大島だった。
大島は今季だけでも、ヤクルト館山、広島永川に続き、メッセで3人目となる引退登板に立ち会ってくれているそうだ。
ストレートで勝負したいメッセだったが、力んでストライクが入らない。
2ボールとなったところで、大島がわざと振ってくれた。
全球ストレートのメッセに、ストライクゾーンにきたボールを大島は振る。奪三振王だったメッセへの敬意からか、空振り三振でメッセを見送ってくれた。
大島にもだけど、ビジターエリアの中日ファンにもお礼を言いたい。メッセのセレモニーにも残ってくれて、ランディコールを一緒にしてくれた。
本当にありがとう。

メッセは、この大島1人で交代。
同級生の鳥谷が出てきて花束を贈った。共に闘った二人は別れを惜しむように二度も抱き合った。

タイガースは、CS進出へ向け負けられないゲームを戦う。
実質先発の高橋遥人に、2回裏の打席で代打を送ったのには驚いた。…と同時に、なりふり構わない攻撃を仕掛ける矢野監督に、本気を見た。
ピッチャーも代打も、今日と明日は全部つぎ込むつもりだ。
最後まで戦うために、明日を戦うために、今日に全てを賭けている。
勝つか負けるか…熱い戦いを目にすることができて、今、一番幸せなプロ野球ファンは間違いなくタイガースファンだ。

陽川と大山にホームラン。
二人も決して満足のできるシーズンではなかったと思うけど、なんだっていい。今日、この試合で打てたことを明日の糧にすればいい。

セレモニーでスピーチするメッセからは、悔いは感じられなかった。
毎日、球場の周りを一人で走っている姿が浮かんだ。
強くて自分に厳しいメッセも、プロ野球選手ではない一人のお父さんに戻る。
心の支えになってくれていたんだと思う。
今、寂しくてたまらない。

メッセがいた10年間は本当に楽しかった。
ありがとうメッセ。
タイガースにきてくれてありがとう。
ずっと大好きです。

[今日のマルテ]

うそやん!こんな大切な試合におらん!

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