横田引退と、鳥谷のお立ち台。

2016年、超変革のスローガンとともに、一軍デビュー。開幕戦ではスタメンに名前が載った。
背番号24 横田慎太郎
2歳上のルーキー高山との1,2番には、新しいタイガースを予感して、本当にワクワクして野球を観た。

恵まれた体格から放たれる長打が魅力で当時の金本監督に起用された…のだが、長打ではなく足の速さで内野安打を量産してしまい、金本監督を「横田だけ逆変革してる」と笑わせた。
確か、プロ初ヒットも内野安打だったはずだ。
バントをしない2番打者。打ち損ないでもヒットになる。横田が塁にいるとまた何かが起きる予感と期待で、目が離せなかった。

「小さい頃は、とにかく外で遊び、家の引き出しにはダンゴムシがいっぱいで―
横田のお母さんの言葉が記事になっていたことがあった。
横田はそのまま大きくなったんだなって笑ったりもした。

2017年、沖縄キャンプ。
突然、宜野座から横田の姿が消えた。安芸にも鳴尾浜にもいない。
「数日前から続く頭痛の検査のため帰阪」というニュースが出たっきり、ウソもホントもなんでも拡散されるこの時代に、続報はなかった。
半年以上経った9月。
脳腫瘍と診断されていたことが、球団と本人から発表された。
選手生命どころか命の危険にあったということに言葉を失ったが、それまで球団やマスコミの方々が完全に沈黙を貫いたのは、横田や横田のご家族を守るためだったとも知った。

背番号24は、横田のために空けてその日を待っていた。
横田は実戦出場が叶わなくても、バットを振り、声を出した。

だが横田はユニフォームを脱ぐ決断をした。
一番の想い出は、と聞かれた横田が、2016年の開幕スタメンより、もがいで苦しんで野球をやった2年半の方がいい想い出だと語った。

野球より大切なものはたくさんあるし、これからの人生の方が長い。…わかっているけど、神様、横田からこんな形で野球を取り上げるなんて、やっぱり私は全然納得できないでいる。
ただ、これからの横田も応援する気持ちに変わりはない。

〈9/22 阪神 3-0 DeNA (甲子園)〉

勝:ガルシア
S:藤川
敗:バリオス

先発した望月に4回途中から能見を送り、そのあと、ガルシア、岩崎、島本、ドリス、球児と、実に7人もピッチャーをつぎ込み、そして、無失点リレーを完成させた。

先発してもなかなか勝てなかったガルシアがこういう形で勝利が舞い込んでくるのを見ると、野球は本当に不思議だ。

決勝打は鳥谷。
打ったことももちろんよかったが、走塁がまたかっこよかった。
三遊間抜けようかという木浪の打球に大和がジャンプして捕球、難しい体勢からセカンドへの素早くて正確な送球。何度だって助けられた大和のファインプレーだ。ジャッジはアウト…だったがここは矢野監督のリクエストによりリプレー検証。
待つ間の鳥谷と大和が楽しそうに会話している。
映像では、鳥谷の足が早かった。
間もなくして出てきた審判により、判定が覆ると、大和が静かに笑った。「トリさんには敵わないな」そんな感じかな。
一流と一流がぶつかって、鳥谷が勝った。

9回、球児が試合を締めた瞬間、鳥谷のとなりで福留が笑っていた。
この時期にお立ち台は心底嫌だったのかもしれない。
自分が打って勝って、ガックリうなだれるプロ野球選手を初めて見た(笑)

けれど、甲子園の景色をあのお立ち台から、鳥谷に見てもらえてよかった。
インタビュアーの橋本航介アナが、鳥谷が今シーズンで退団する点に言及したのは少し驚いたが、よかったと思う。
今、どんな思いで試合に臨んでいるのか、鳥谷の声で聞くのは退団表明以来初めてのことだ。
鳥谷も、真面目に応えてくれた。

チームにも鳥谷にも、悔いのない野球をやってほしい。あと少しを、その先のために。

[今日のマルテ]

9回表、木浪のショーバンになった送球をマルテが捕り損ね…今季100個目の節目のエラーにマルテ見事に絡む。

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