37杯目「立ち呑みMAX はんにゃとう道場」

道場がある飲み処

板宿の2軒目は板宿本通商店街の東、新町商店街にある立ち呑みMAXはんにゃとう道場を訪れた。新町商店街はアーケードだが車が普通に走るので、歩行者とくに酔っ払いは注意していただきたい。

店主の山口康夫さんに店の歴史を聞いたところ、もともと神戸市須磨区のベッドタウン白川台で営業していた谷川商店がルーツであるとのこと。

-創業はいつ頃でしょうか。
 「白川台団地が誕生したころ、昭和48(1973)年に白川台で開業しました」
-立ち飲みを始めたのは。
 「板宿の平田町1丁目でリカーショップMAXを開いたのは震災の2、3年前で、酒屋だけではやっていけないので立ち飲みを始めました。立ち飲みは15年やってますかね」
-平田町から現在地に移転されたんですね。
 「ここで11年目になります。近くにいい場所があったのでお客さんごと引っ越せたのが良かったです」

この店が面白いのは「はんにゃとう道場」と名付けられた酒屋併設の立ち飲みであったこと。昼間は近所のお年寄り、夕方からは仕事帰りのサラリーマンが来店かと思っていたら「昼も夕方からも変わらないですよ」と山口さんの返事は意外だった。

入り口を入ったすぐ上に、次のような厳しい心得が貼ってあることに気がつくのに時間はかからないだろう。

 曰く
 「一、酒乱のごときは 破門のこと 
  二、鍛錬時間は 最高一時間半とする
  三、練習代は 初めに納金のこと
  四、自前の物は 持ち込まないこと
  五、道場主の教えを尊重すること」
こう書いてあるからと言って恐れることは何もない。品格のある飲み方をすればいいだけのことである。また般若湯のいわれについて「修行中の僧は十戒を守るため日夜修行に励まれ、肉や酒は禁止。しかし、我慢できずに酒は飲まれていた」との説もある。人間なんだから酒は飲もう。

では、いつものようにカウンターに席をとってビールで乾杯である。アテは近くの市場で仕入れたものの他、まゆみさん手作りの品々がカウンター上に並んでいる。その中からスジコンとホタルイカをもらった。他のお客さんが焼いてもらっていた豚足も250円とリーズナブルな値段だ。この豚足は神戸の立ち飲みの特徴でもある。

午後3時、この店のアイドルまゆみさんが登場すると一気に明るくなって盛り上がる。いやあ、飲み処に安い酒があればいいというのは昔のことで、健康な色気も必要だという見本のようである。

店はカウンターのほか、大きな酒樽の蓋を二分割したテーブル席がある。他の店より年齢高めの常連さんらが椅子ありのテーブルを囲んで楽しく飲んでおられる姿にほっこりする。椅子はお客さんが自分で持ち込んだものらしい。店のあらゆる場所に忘年会やボーリング大会、はたまた競馬会の記念写真が掲げてある。店が愛されてきた証であろう。

店主の山口さんは「酒やアテが安くてしゃべるのが楽しい。慣れてきたらお互いに友達になって話していますよ」と。人との出会いを提供し、居場所のひとつとして店がしっかり役割を果たしているようだ。

ビールが空になったので焼酎のお湯割りに切り替えた。カメラの福田さんは芋、筆者は麦を選んだ。その後も、福田さんは菊正宗の熱燗、筆者はチューハイ、アテはゆで卵、定番のエイのヒレなどを追加した。あれこれ飲んで食べて、一人当たり1000円ちょっと。うれしいセンベロですな。

最後に山口さんにとって立ち飲みとは何かを聞いた。
「早う止めたい」と聞こえた気がしたが、もうちょっと長く高齢者の居場所を提供し続けていただきたい。

須磨区宝田町1丁目にある谷川酒店はご親戚の店であることを付記しておく。

「立ち呑みMAX はんにゃとう道場」
神戸市須磨区飛松町2丁目1-17
TEL078-732-2579
営業時間 12:00~20:00
定休日 日曜

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