親子三人で仲良く切り盛り
菊地酒店から西に少し歩けば、同じく路地裏に石井商店があります。菊地酒店と同じ光景に出会いました。店内に入りきれないお客さんが店の外で立ち飲みされています。しかも、若者の酒離れが言われだして久しいのですが、雨の日にもかかわらず、若いお客さんのグループが楽しそうに飲んでおられて嬉しい。
石井商店の歴史は古く、米屋として大正13(1924)年に創業し、酒を扱うようになったのは昭和10年頃のこと。今は亡き二代目さんによれば立ち飲みは戦後の昭和35年頃になってから始めたそうです。
三代目の石井康裕さん夫婦を中心に店を切り盛りされており、二代目の奥様もまだまだお元気に仕事をされています。家族がひとつになって客をもてなしておられます。
カウンターの他にテーブルが三つあり、居酒屋のように座って利用することも出来ます。カウンターの上には美味しそうなアテがずらりと並んでいます。初めて訪れた時のこと、たこ焼きがあったのでこれと熱燗を貰いました。
たこ焼きをつつきながら、二代目さんから昔話を聞かせていただいたことが思い出されます。
「戦時中に米屋と酒屋のどちらかの看板を外せと言われましてね、昭和32年になって酒屋を復帰できました」
いわゆる二枚看板という問題である。
そうこうしていると中畑商店によく行くと言う常連さんがお見えになり、石井商店の良さを聞いて見ると「アテが安い、美味しい、早い」と三拍子揃っていると絶賛されました。
酒があれば、アテは乾き物や缶詰でよいとするのは今や昔のことのようで、時代は着実に変化しています。酒屋の立ち飲みにも居酒屋的要素が要る時代になっていることの現れでしょう。
というわけで、今回はコンビーフ炒り玉子というメニューに目が行きまして注文しました。すると三代目さんはフライパンにコンビーフその他の材料を入れて一から作ってくれました。まずいはずがありません。旨い。コンビーフに包丁を入れて、そのままで出される店が多い中、これは超お勧めです。
ふと横を見ると垂水の角打ちでよくお会いする方の姿があります。「なんでここに」と挨拶するも、神戸はコンパクトな街、狭いなあと実感します。
最後に、石井商店でもこの仕事をされていて良かったことをお聞きしました。石井さんは「いろいろな人と出会えます。そして教えていただく事が多く自分の糧になります」と菊地酒店さんと同じように仰いました。人との出会い、地域との出会い、これこそ角打ちの醍醐味です。
この近くで仕事をする人は、その日の気分によって菊地酒店と石井商店を行ったり来たりするのでしょうか。それもまた楽しいです。
神戸市中央区東川崎町5丁目3-4
TEL 078-671-1172
営業時間 17:00~20:00
定休日 日曜、祝日