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第12回 サンテレビボックス席ができるまで

前回までは、中継における本社Dやフロアディレクター(FD)の仕事内容について書かせていただきました。あとは中継車Dのお仕事について、ということもありますが、その前に『サンテレビボックス席』がどのような人たちによって、どんなタイムスケジュールで作られているのかをまず書かせていただければと思います。今回は甲子園球場でのナイターを想定したスケジュールです。

さて、そもそも野球中継にはどれだけのスタッフが関わっているのでしょうか?
ディレクターやアナウンサー、カメラマン、音声、VTR、VE、放送席などの設営スタッフ、アシスタント、中継車や音声車のドライバー、スコアラー、など様々な役割の方々が関わっています。現場だけで40名近く、本社スタッフも含めるとなんと50名ほどの人数が関わっています。本当に大がかりです!私も中継に携わるまでは、こんなに人数が多いのかということを全く知らずにびっくりしました。現場のスタッフのお弁当を発注する、というのもディレクターの仕事の一つなのですが、そのときにはじめてスタッフの多さを実感しました。

【13:00 中継車が甲子園球場へ】

中継の5時間前には中継車と音声車が現場入りします。到着次第カメラマンや音声さんなどの技術スタッフが設営に入ります。なお、この段階ではもう中継のカメラ位置の土台や、放送席は設営が終わっています。準備って本当に大変なんです!

中継車や音声車には、中継で使う重たいカメラなどの機材や、長くて重たいケーブルなどがぎっしりと詰め込まれています。それを積み下ろし、それぞれの持ち場へ持っていくわけです。夏の暑い時期は本当に重労働です。雨が降っていても中止が発表されない限りは中継の準備も進めますので、本当に技術スタッフさんには頭の下がる思いです。
機材のセッティングが終わると、中継車にいるTD(技術スタッフの責任者)や、スイッチャー、VTR、VE、ミキサー(音声)の立ち合いのもと、テストが行われます。ここできちんと映像が中継車に届いているのか、音がクリアに聞こえているかをチェックします。

【14:00ごろ ホームチームの全体練習スタート】

ホームチームの練習は試合開始の4時間前ごろより始まります。ウォームアップを全体で、そのあとに投手はキャッチボールやランニング、ブルペンでの投球を行います。野手はバッティング回りや、ノック、走塁を行います。この間にアナウンサーは練習を終えた選手に事前取材を行います。ディレクターも、何か練習中に変わった動きがないか、登録抹消や新たに一軍登録された選手はいないか、などをチェックします。チーム広報さんにもご挨拶します。

【16:00まえ ビジターチームの全体練習スタート】

ホームチームの練習が終わったらビジターチームの全体練習がスタートします。このあたりにはお客さんの入場も始まりますのでご覧になっている方も多いと思います。ビジターチームにもアナウンサーは事前取材を行います。ディレクターも動きをチェックしています。

【16:15ごろ 中継全体打ち合わせ】

中継スタッフが中継車の周りに集まって打ち合わせを行います。まずは当日の中継車Dから、キューシートに書かれている中継の段取りを確認します。そのあとに、実況アナウンサーとリポーターによる試合の見どころの確認を行います。ここで、当日の中継でどのあたりを強調した中継にしたいか、ということを全体に示すことができます。
全体としてはここまでで、そのあとにカメラマン、VTR、スイッチャーとディレクターの打ち合わせが行われ、スイッチャーと中継車Dから、見どころに沿って、「このときはどのカメラでこういう風に撮ってください。」などの確認を行います。個人的にはここが中継において一番大事にしたい瞬間です!
試合はいつどんな展開になるかわかりませんので、急に何かが起こったときにどうするか、注目選手が出てきたときはこういう演出をしたい、など、あらかじめ伝えておくと全員で一丸となって同じ方向を向けるからです。中継車Dを行うときはここを大事にしたいと考えています。

【17:45ごろ スタンバイ】

解説者さんとの打ち合わせも終え、いよいよそれぞれが持ち場へ。最終的に音声のチェックを、本番のアナウンサーと解説者さんの声で行います。そして本番へ!

というのが本番までの流れです。野球以外のスポーツの中継も同じようなスケジュールです。あらためて見ると長い一日ですよね。続いては中継の要である「カメラ位置」について書かせていただきます。カメラ位置の説明が終わればみなさんももうサンテレビボックス席通です!お楽しみに!

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第11回 サンテレビボックス席ディレクターの裏側は?⑨ ~フロアディレクターのお仕事 その5~

「放送席~放送席~。今日のヒーローは◎◎選手です!」
勝利の後に必ず行われるこのヒーローインタビュー。中継をご覧になっている視聴者の方々や、球場でご覧になっている観客の方々の喜びの時です。ここで様々な名言や迷言(笑)が生み出されてきました。これを楽しみにしている方も多いでしょう。

このヒーローインタビューがどのように行われているかを今回は書かせていただきます。まず基本的なことからですが、ヒーローインタビューを担当するのは当日に中継を行っているテレビ局になります。サンテレビではその試合のベンチリポートを担当しているアナウンサーが話を聞いてくれます。そして、そのヒーローインタビューの段取りなどを確認するのが、2人目のFDの仕事です。

試合前に行われる全体練習の際に、FDは球団のチーム付きの広報さんに「今日ヒーローインタビューを担当させていただくので、よろしくお願いします。」というような挨拶をします。そこで広報の方に「今日はサンテレビが担当なんだな。」と認識をしてもらうわけです。ちなみに甲子園球場や京セラドーム大阪でのタイガースの主催試合でヒーローを担当する場合はどちらが勝ってもヒーローインタビューを担当、ビジターで中継がある場合はタイガースが勝った場合の担当、ということになっています。

基本的には球団の広報さんは試合中に選手やコーチの談話などを、ベンチ裏の控室にいるベンチリポーターに伝えてくださいますので、その際に「今日は◎◎選手になりそうです。」「今日は▽▽選手にお願いしましょうか。」ということで話をリポーターと進めていただいています。甲子園でのビジターチームが勝ちそうな場合、ビジターチームの広報さんとは8回が終わったあたりで、電話などで直接FDが選手の候補のやり取りをしています。

タイガースのある選手にヒーローインタビューできることになった、という段階で次に私たちにできることは、タイガースの勝利をとにかく祈るのみです!とある試合でもう勝利に向けてスタンバイをしていたときに、追いつかれたり逆転されたりしたときには肩を落として球場を後にしたこともあります…。

試合終了後、ヒーローの選手が出てきたら立ち位置までFDがご案内をして、リポーターにインタビューのスタートの合図を出したら、ヒーローインタビューが始まります。甲子園球場でタイガースが勝った場合のヒーローインタビューのアテンドをしていると「球場のファンの方々の熱気は本当にすごい!」と思います。実際にグラウンドレベルにいると、声援はとても大きく情熱的です。よくタイガースの選手が「ファンの皆さんの声援が力になりました!」と口にすることは多いですが、本当に力になる声援だと思います。

最後に、タイガースファンの方々に注意です。私が甲子園球場でのヒーローインタビュー担当FDになったときのタイガースの勝率はものすごく悪いんです…。(2割あるかどうか…。)
3塁側でビジターチームのインタビューをひっそりと行っていることが多いです。今年はその場合でもタイガースのインタビューをアテンドできるよう、あらためて必勝祈願をしてきました。今年はもっとタイガースの勝利を甲子園球場で味わえるようになるはずです!

以上、5回にわたってFD業務のお話を書かせていただきました。FDと本社Dの業務を行いながら、我々スポーツ部のディレクターは、3年ほど『サンテレビボックス席』がどのように中継されているのかを学び、ようやく中継車Dとしての業務に就くことができます。中継車Dの話をする前に、次回からはあらためて「『サンテレビボックス席』ができるまで」と題して、試合当日の流れや、どういうスタッフが現場にいて、何台のカメラで何を撮っているのか、などを数回に分けて書かせていただきます。引き続きお楽しみに!

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第10回 サンテレビボックス席ディレクターの裏側は?⑧ ~フロアディレクターのお仕事 その4~

『サンテレビボックス席』はご存じのとおり、プレーボールからゲームセットまでの完全中継でお送りしています。あの有名な1992年9月11日、タイガースとスワローズの6時間26分という日本プロ野球の最長試合も最後まで中継するほどです。サンテレビの社員が言うものではありませんが、良い意味でおかしいですね…。

「試合の途中ですが、〇〇テレビをご覧の方とは9時でお別れとなります。ご了承ください。」
というアナウンサーのお知らせを、中継をご覧の方はお聞きになったことがあると思います。『サンテレビボックス席』は、試合によってネット局でも同じ内容が中継されているのです。その場合、他の放送局では必ずしもプレーボールからゲームセットまで中継されているというわけではなく、試合の途中から番組が始まったり、逆に試合の途中で番組が終わったりということもあるのです。

「そもそもネット局って?」
と思われる方も多いと思います。サンテレビは独立局という、たとえばテレビ朝日さんと朝日放送さん、または日本テレビさんと読売テレビさん、のような系列に属さないテレビ局ですが、『ボックス席』では同じく独立局であるKBS京都さんや、三重テレビさん、岐阜放送さん、といったテレビ局にサンテレビの中継映像をネットしているのです。

このネット局の途中乗り、途中降りというのがFDの時間管理の中では緊張するところなんです!(中継車Dや実況アナウンサーもですが…)
と、言いますのも野球はいつ投げ始めて、打って、走って、攻守交代になって、というのが当然決まっておりませんので、例えばちょうど夜の7時にどういう状況なのかは予測がつきません。ただし、ネット局が7時から中継が始まるということは決まっています。ネット局の中継をご覧になった方は、いきなりホームランが出て喜んでいるタイガースファンのアップが映る、ということもあるわけです。
 
上記のような場合はある意味仕方ない部分もあるのですが、例えば実況アナウンサーと解説者の方が話をしている途中で急に7時を迎えると、ネット局をご覧の視聴者の方はいきなり何の話をしているのか分からない話を途中から聴くことになるのです。

それを防ぐため、「ポーズ」「頭づけ」というのをFDの指示で実況アナウンサーにしてもらわないといけません。「ポーズ」というのはそれまで話をしていたことをアナウンサーにまとめてもらって、何秒間か黙る、というものです。7時からネット局の中継が始まる場合、そこに向けて1分前から細かくFDが指示を出して、7時になる数秒前に話をまとめてもらわないといけません。(よほどの試合が動くようなプレーが起こった場合は別ですが。)
その「ポーズ」をとって、7時を迎え、ネット局の中継が始まったら「頭づけ」をしてもらいます。「甲子園球場での阪神対広島の一戦。試合は4回表の…」という状況説明を実況アナウンサーが行うのです。

事前の打ち合わせでもきっちりと確認をしますし、番組のレシピでもあるキューシートにはその旨が書かれています。ただ、ちょうどネット局の中継が始まったり終わったりするときに試合が白熱した展開だったりすると、ついついFDも中継車Dも実況アナウンサーも忘れそうになったりすることもあります…。ここは気を付けないといけません!

もう一つ複雑なのがCMの途中にネット局の中継が始まる場合です。90秒CMの途中でネット局向けに話をして、サンテレビのCMが明けるタイミングでポーズをとらないといけませんので、実況アナウンサーはもちろん、指示を出すFDも緊張の一瞬です。サンテレビだけでなく、ネット局での中継をご覧いただいている視聴者の方々に観やすい、聴きやすい中継をできるよう今後も心掛けていきます。

現在、ネット局は1試合でも最大2つか3つですが、スポーツ部ディレクターの先輩に話を伺うと、昔は7つや8つものネット局に同時に中継されていたこともありました。そのときなどは、もっと細かく「ポーズ」や「頭づけ」が発生するので、「大変やったやろなぁ…。自分やったら頭の中がぐちゃぐちゃになるわ…。」とその話を先輩から伺っているときに想像して吐きそうになったのは秘密にしておいてください…。

FDの説明だけでもう4回分も書いてしまいました…。次回は現場にいる二人のFDのうち、もう一人のFDの主な役割でもある「ヒーローインタビューのアテンド」に関して書かせていただきます。FDのお仕事編は次回がラストです!お楽しみに!

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第9回 サンテレビボックス席ディレクターの裏側は?⑦ ~フロアディレクターのお仕事 その3~

「パーパラパッパッパッパッパッパラパッパッパ♪」
というスポーツテーマがかかるといよいよ『サンテレビボックス席』の中継が始まります。30秒はテーマ曲がかかり、その間は対戦スーパーや、提供社様のスーパーが出されていますので、実況アナウンサーはしゃべりません。この間にプレーが始まるときもありますし、まだ始球式などが行われているときもあります。30秒を過ぎると実況アナウンサーがしゃべりだします。(アナQと呼ばれます)

フロアディレクター(FD)は、そのアナQの時間管理を行い、あとは中継車Dの映す映像などに従い、先発投手の紹介などに移ります。そのあとは基本的に一人目の打者が打ち終わったあとに、両チームのスタメン紹介を行います。
 
基本的には試合や中継車からの映像、実況アナウンサーと解説者のコメントに従って中継は進んでいきます。そこでFDがしなければいけないことは、現場の状況を伝えるということです。例えば、中継車では、7台のカメラが撮った映像は見えていますが、逆に言うとそれ以外の状況は見えていません。屋外での球場で言うと、風向きなどはその都度カメラさんに頼っているわけにはいかないので、FDからの声が必要なのです。ひとつ例を見てみましょう。

「なんでこのタイミングで急にバックスクリーン上の旗のようすが映るんだろう?」
そう思われる方々は多いと思います。

甲子園球場でのカープとの一戦。4番の鈴木誠也選手が打席に立とうとしています。一発のある鈴木選手のバッティングで気になるのは今の風向きです。甲子園球場でいつも通りの強い浜風(ライトからレフト方向への風)が吹いていると、右打者の鈴木選手の一発に注意が必要だ、という情報を視聴者の方々に伝えることができます。もし普段とは逆方向の風が吹いていると、今日はタイガースの左打者でもライトスタンドへのホームランを期待できるな、ということを伝えられるのです。
一発のあるバッターが出てきたときや、いつもとは違う風向きだな、いつもより強い風が吹いているな、というときにFDから声掛けをします。すると、カメラマンさんがバックスクリーンの上の旗を撮って風向きが映像で視聴者の方々へ伝わります。中継スタッフは基本的には試合を追いかけていますので、そうしたFDからの一言はとても重要です。
同じく中継車Dがプレー中にはチェックしづらい、ネクストバッターズサークルにいる代打のチェックもします。先発投手が6回を超えて打席に回ってくるときなどは、まだ続投するかどうか、とても気になるところなのでそちら側にも注意をしないといけません。

放送席の位置からネクストバッターズサークルが見えにくい球場もあります…。どことは言いませんが、その場合は身体を必死にねじらせたり、どんな体制でも見えない場合はカメラさんにサポートしていただいたりしています。ちなみに甲子園球場はとても見やすい球場です。

同様に注目しなければいけないのは、守備隊形です。ランナーが得点圏にいるとき、外野は前進守備をしているのか、内野はゲッツーシフトか、バックホーム用の前進シフトか、などチェックをし、中継車Dやカメラさんに伝える必要があります。そこで映った映像を見て、実況アナウンサーがコメントをつけてくれます。
FDの自分が中継車Dにシフトを伝える前に、実況アナウンサーや解説者の方が「外野が前に来ていますね。」と言われてしまった(?)ときは、密かに「先を越されてしまった!」と悔しさを感じていることは内緒です…。

FDの主な仕事の一つ「時間管理」ですが、冒頭に記したようなアナQのタイミング管理のほかには、CMに入るべきときに、実況アナウンサーに気持ちよく締めてもらうタイミングで合図を出す、など様々あります。既にお伝えしていますとおり、「ネット局」があると時間管理はとても複雑になります。そのあたりの仕事内容のご紹介は次回書かせていただきます。お楽しみに!

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第8回 サンテレビボックス席ディレクターの裏側は?⑥ ~フロアディレクターのお仕事 その2~

中継当日、現場に到着し、まずフロアディレクター(FD)がしなければならないことは、「FDバッグ」を中継車から放送席へ持っていくことです。
「FDバッグ」とは何か?というのが写真の何の変哲もないスーツケースです。

大きいほうは甲子園・ナゴヤドーム・マツダスタジアムなどで使い、赤の小さいほうは横浜スタジアム・神宮球場で使用します。入っているものは同じです。

このFDバッグには中継で必要なものがたくさん入っています。写真に写っているのはそのごく一部です。

まずは球団から配布される「メディアガイド」というものがあります。この中には、選手のプロフィールや過去の成績はもちろん、
・プロ初安打を打ったのはいつか?
・プロ初勝利を挙げたのはいつ?
・前年の対戦カード別や対戦打者(投手)別の成績
・歴代背番号一覧
・球団のあゆみ

など、通常我々が手にする選手名鑑よりも詳細な内容が書かれています。特にデータ面などは大変充実しています。(好きな女優や愛車などは書かれていませんが…)
球団が自ら出しているものですので、実況アナウンサーやディレクター、スポーツ新聞の記者さんは、メディアガイドを頼りに過去の記録などを使用しています。
他にはセ・リーグ発行の「グリーンブック」や、「野球規則」などの本が入っています。
「野球規則」は細かいルールがぎっしりと書かれています。一年に一度は「ルールの盲点」をついたようなプレーが出ることがあります。そのときにすぐにアナウンサーや中継スタッフが気づくことのできるよう、この本はとても重要なのですが、内容はとても複雑です…。ただ、読んでいると道具の規定や塁間の詳しい距離など、「なるほど!」と思うことが盛りだくさんです。

次にご紹介するのは「双眼鏡」です。
「双眼鏡なんて要るの?」と思われるかもしれませんが、これがけっこう役に立ちます。
ネクストバッターズサークルに代打の選手が出てきたときに、いち早く中継車Dに伝える必要があるのですが、放送席から距離が遠く、肉眼では見分けがつきにくいときがあります。そのときに双眼鏡を遣えば、背番号もくっきり!誰が代打に出るのかをすぐに伝えることができます。

ほかには「30秒前」など時間が書かれたシート。FDのすぐ隣に実況アナウンサーがいるので、これも必要ないのではと思われる方もいると思います。ですが、甲子園球場の放送席は観客席の中にありますので、ファンの大声援で肉声はあまり届きません。シートを見せることできちんとコミュニケーションができますし、さらに離れたところに座っている解説者の方にも「そろそろCMが明けますのでスタンバイをお願いします!」という意思表示にもなります。
放送終了時にも「30秒前」と書かれたシートを見せます。その際はオンエア中ですので、実況の隣のディレクターが大声で「30秒前!」と言ってしまうと、みなさんの見ている中継にディレクターの声が入ってしまいます。ですので、観客席と仕切られている他球場の放送席でもこれらのシートは使われます。同様に「CMへ」のシートを見せることで「そろそろCMに入るのでまとめてくださいね。」ということを伝えられます。

そのほかにも、ハイライトVTRで出されるシーンを記入するシート、メモや筆記具、さらにはゴミ袋や暑い時期に出演者の飲まれるお水を入れる簡易のクーラーボックスなど色々入っています。ドラえもんの4次元ポケットのようですね。

それらを用意し、中継2時間前に行われる制作・技術スタッフ打ち合わせ(今後書かせていただきます!)と、解説者の方との打ち合わせを終え、いよいよ本番へ!初めてのFD業務が始まります。次回は「試合中のFDの動きは?」ということを書かせていただきます。お楽しみに!

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第7回 サンテレビボックス席ディレクターの裏側は?⑤ ~フロアディレクターのお仕事 その1~

「5秒前、4、3…」
阪神甲子園球場のバックネット裏の観客席の中に設けられた放送席を目にされた方も多いと思いますが、その放送席で実況のアナウンサーと解説者の方の隣にたまに立って指折りカウントをしているのがフロアディレクター(以下、FD)です。

そもそも何をカウントしているのでしょうか?
お察しのとおり、CMが明けて実況アナウンサーが話し出すまでの時間のカウントが主です。実況アナウンサーは、FDの合図(キュー)を頼りに話し出しますので責任重大です。ちなみにその他には番組が終了するまでのカウント、また、サンテレビ以外の中継ネット局が試合の途中に始まったり、終わったりする場合のカウントなどです。このネット局が多いときがFDにとっては身の引き締まる瞬間で―。というのはまた追って…。

スポーツ部に配属されて、本社Dとしての勤務を数試合行い、いよいよFDとしての勤務です。私が初めてFD業務を行ったのはナゴヤドームでのドラゴンズ戦でした。初めての遠征、初めての現場での試合、初めてお会いする福本豊さん…。色々と慣れない中でも先輩ディレクターが色々と当日の流れを教えて下さいました。

「現場にはフロアセットを持っていくんやで。」
フロアセット?なんのことでしょうか?
当日中継を行ううえで必要な書類などが入った大きな封筒です。
中継の当日までに担当の中継車Dが色々と封筒に書類を用意し、それをFDが持っていくわけです。


どのような書類があるのでしょうか?
一番重要なものは「キューシート」というものです。キューシートに書かれているのは主に以下のようなものです。
・どのタイミングでCMに入るか
・どこでVTRを出すか
・いつ現場の音声を使用するか
・どのタイミングで字幕スーパーが出るか
・当日の解説者と実況アナウンサーは
などです。台本よりはざっくりとしたものですが、これが当日のディレクターやアナウンサー、技術スタッフさん、サンテレビの中継をネットして下さる局の指針となるのです。

他には当日の試合の約40分前に発表されるスタメンやベンチ入りメンバーを記入する「メンバー表」や、中継のなかでご紹介する他球場速報用の記入シート、『ボックス席』ではおなじみの「テレホンプレゼント」の原稿など様々なものがあります。
ちなみに、「メンバー表」は発表され次第、FDやスタッフが手書きで書いています!メンバー発表から中継のスタンバイまで20分ほどしかありません。中継に向けたスタッフがスタンバイするまでの間に素早く、読みやすく書かないといけません!意外とアナログですね。

現場にフロアセットを持っていき、球場へ着いたのは試合開始4時間前。そこでディレクターの先輩から言われたのは、
「球場に着いたらFDバッグを中継車から放送席に持っていくんやで!」
FDバッグ?なんのことでしょうか?
この中にもFD業務に必要なものがたくさん入っているのですが、もうけっこうな分量になってしまいました…。

というわけで、次回は「FDバッグには何が入ってるの?」を書かせていただきます。裏の話が多すぎてこんな調子でいつになったらこのコラムで中継の話を書きだすのでしょうか…?それも含めてお楽しみに!

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第6回 サンテレビボックス席ディレクターの裏側は?④ ~本社ディレクターのお仕事 その2~

『サンテレビボックス席』本社ディレクター(以下、本社D)の重要な仕事の一つに「CMボタンのテイク」というものがあります。株式会社サンテレビジョンは民放テレビ局ですので、放送を維持するためにはスポンサー各社様からの協賛が必要となります。その一つがCMです。
基本的に『サンテレビボックス席』でCMが入るのは攻守交代の間です。3アウトでチェンジになると、現場中継車ディレクターからの指示でCMへと移るのですが、本社Dが写真の「CMボタン」をテイク(押す)するとCMが自動的に始まるのです。

これが非常に気を遣うわけです!もちろんイニングの途中で思いっきりゲームが動いているときにCMボタンをテイクすることなどあり得ませんが、万が一そういうことをすると、とんでもないタイミングでCMが流れてしまいます…。その“うっかり”の可能性を少しでも減らすために、このボタンにはフタがついていて、そのフタを開けないとテイクできないようになっているのです。

通常の中継でのCMへの流れはこのようなかたちです。3アウトになってチェンジというときに、実況アナウンサーの「4回表が終了。2対0でタイガースがリードです。」というコメントを聞いて本社Dがボタンをテイクするという流れです。

ただし!3アウト目のプレーが試合を重要づけるプレーであった場合は、中継車Dのとっさの判断でそのプレーのリプレーを流し、CMへ、という流れになります。また、アナウンサーの方が別のコメントを話して締める場合もありますので、本社Dは中継車Dとの連絡回線や、実況アナウンサーと息を合わせないといけません。

「そんなん簡単なことやん!」
と思われる方も多いと思います。決して難しいことではないですし、もちろんよほどのことがないと間違いは起こりません。ただ、「万が一」があると…と思うとやはり気を遣いますし、緊張感を持って取り組むことは本当に大事なことだと思っています。

第5回にも記しましたとおり、本社Dには中継に載せる字幕スーパーが合っているのかを確認し、放送に載せる、という仕事もあります。打者の成績などは、試合中にも随時更新されていくわけですから、その都度確認が必要となります。視聴者の方々は我々の載せるスーパーを「当然合っているだろう。」という思いでご覧になっていますので、制作側としては当然そのご期待に添ったクオリティのものを提供する必要がありますし、ミスの無いようにしなければいけません。

完璧で当たり前。失敗すればそれが目立つ。ミスを恐れて縮こまってはダメですが、細心の注意を払って今後も中継に取り組みたいと思います。ただ、決して緊張感でピリピリ…というわけでもなく、チャンスでタイガースが打てば「おぉ!」と盛り上がることもあるので、楽しい雰囲気で中継を行っていますよ!

さて、何度か中継を経て、次は実際に球場での中継業務です。次回は「フロアディレクターのお仕事は?」を書かせていただきます。お楽しみに!

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第5回 サンテレビボックス席ディレクターの裏側は?③ ~本社ディレクターのお仕事 その1~

配属からしばらくして、いよいよ『サンテレビボックス席』の中継に関わる瞬間がやってきました。はじめは本社ディレクター(以下本社D)としての勤務です。

そもそも本社Dというのは何をしているのでしょうか?その前にサンテレビ本社には2つのスタジオと3つのサブ(副調整室)があります。
『4時キャッチ』や『ビッグ・フィッシング』『熱血!タイガース党』などの番組を収録している第1スタジオとそのサブ(L1サブ)、『サンテレビニュース』などのニュース用の第2スタジオとそのサブ(L2サブ)、そして、スポーツ中継のときに使うL3サブです。

L3サブ

通常の番組では、サブと言われる部屋ではメインのディレクターやカメラさんに指示を出すスイッチャーさん、音声を調整している音声さんやBGMなどをつけるSEさん、照明ディレクターさんや、画面の明るさや色味を調整するVEさん、など様々な役割があります。
ただし、スポーツ中継の場合、現地の中継車がサブのようなものですので、L3サブにはディレクターとスイッチャーの2名、あとはそれぞれの字幕スーパーを更新したり準備したりするスタッフ4名がいるのみです。

ということは、本社Dの仕事の主なものは、スーパーのイン・アウトの指示をスイッチャーさんに出すということです。野球中継で出されるスーパーはこのようなものがあります。

・その日の試合会場や、実況&解説の名前スーパー、その他番宣など
・常時出ているスコアと何ボール何ストライクで何アウトかの表示(小得点&BSO)
・CMの前に出るランニングスコア
・ピッチャーの球数表示
・打者や投手の今季成績やその日の内容、プロフィール
・順位表や他球場の成績、明日の予告先発投手

これらのスーパーを中継車ディレクターらとやり取りをしながらいつ出すのかを判断し、その表示しようとしているスーパーが間違っていないかどうかを確認したうえで画面に載せます。
普段何気なく目にしているスーパーも、実はどういうときに入れて(イン)、どういうときに外すか(アウト)、『サンテレビボックス席』の中でもルールがあります。
例えばタイガースの近本選手が打席に立つとします。初球までの間に一度近本選手のアップが映りますよね。そのときにカメラさんが近本選手をあるサイズで撮っていればその日の成績のスーパーを載せる、といった具合です。
おもいっきり顔をアップしたようなサイズや、頭から足まで全身が映っているようなサイズ(FFといいます)ではそのスーパーは載せません。どのようなサイズのときにスーパーが載っているのか。中継をご覧になる際にはぜひ注目してみてください。

このように、それぞれに決まったタイミングがあってそのスーパーをイン・アウトする、というのは単純なようでなかなか気を遣います。
「本当にこのタイミングでいいのかな?」
「このスーパーは間違っていないだろうか?」
初めて本社Dを務めた試合では、スーパーを入力してくれるスタッフと確認をしながらスイッチャーさんに指示を出すのは特に緊張しましたし、正直言うと出すタイミングを間違えてしまったこともあります。間違わないように気を引き締めて今後も中継を行います!

本社Dのお仕事のもう一つに、「CMボタンのテイク」というものがあります。これがまた緊張するんですが、それはまた次回に書かせていただきます。お楽しみに!

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第4回 サンテレビボックス席ディレクターの裏側は?② ~サンテレビのスコアブック~

スポーツ部へ配属されてからプロ野球中継の業務へ就くまでに覚えないといけなかったのがスコアブックの書き方です。私は野球を観ることは好きですが、野球部に所属したことは無かったのでスコアブックの書き方など一切分かりませんでした。
中継がある日以外にも、取材などで球場に伺う機会があります。そのときにスコアを書けないと、その日にどういったプレーがあったのかをすぐに撮影した映像から抜き出して編集することができません。後々その試合のスコアブックを見返したときにすぐに「あのときのあのプレーだな。」と思い出すこともできます。

「これが書けるようになってや!」
と渡された見本を見ても、何がなんやら…。「わからんやろ?」と嬉しそうに言う先輩に一つずつ意味を教えていただきました。

スコアブックの書き方参考

「○」は見逃しストライク
「●」はボール
「V」はファウル

などという感じです。残塁すれば「ℓ」をその走者のところにつけたり、暴投で進塁した場合はそこに「WP」を書いたり、などもあります。一球たりとも試合中は目を離すことができません。なかなか一試合集中してつけることは難しいなと感じました。

実はサンテレビ独自のローカルルールのようなスコアブックの書き方もあります。「ダブルプレー」のつけ方や、「イニングの先頭打者が出塁したとき」のつけ方などです。

あらためて会社に置かれているスコアブックを見ると、タイガースファンにとって「宝の山」だなと感じます。掛布雅之さんや、真弓明信さん、王貞治さんのお名前や、日本一になったシーズン、日本プロ野球最長試合となった1992年のあの試合…。

先人たちの残して下さったスコアブックとサンテレビに残る中継映像を観ながら、来たる開幕に備え、「こういう中継のやり方があったか!」などを研究し、中継に生かしたいと思います。
なんとかそれなりにスコアブックを書けるようになり、いよいよ中継の業務に就きます。次回は「本社ディレクターのお仕事」を書かせていただきます。お楽しみに!

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第3回 サンテレビボックス席ディレクターの裏側は?① ~スポーツ部は何をしているの?~

開局から間もなく51年を迎えようとしているサンテレビが、その開局の年から続けているのがプロ野球中継です。その数はなんとタイガースの公式戦中継だけで3400試合を超えます!プレーボールからゲームセットまでの中継は、視聴者の方々や番組スポンサーの方々のおかげで今まで続けられています。
 
私自身が子どもの頃から『サンテレビボックス席』を観ていました。和田選手、新庄選手、ハイアット選手、川尻投手、湯舟投手、リベラ投手…。だいたい歳がバレてしまいそうですね。当時は最下位の多いタイガースでしたが、サンテレビのおかげで(?)気づけばタイガースファンになっていました。

入社後、営業部での勤務を経てスポーツ部へと配属された私ですが、番組づくりに関してはほぼ知らない状態でした。実際に「プロ野球中継がどのようにして作られているのか?」は、配属されてからみっちりと教わりました。

それではスポーツ部員は何をしているのでしょうか?
スポーツ部は現在、部長とディレクター6名の計7名で業務を行っています。
『サンテレビボックス席』においてはディレクターの役割は大きくわけて3つあります。それぞれの詳細はまた今後書かせていただきます。

中継車ディレクター(以下、中継車D)

中継車Dは、試合中は中継車に乗り、“どのカメラの映像を映すか”、“どこでリプレイVTRを再生するか”、“どのように番組を進行するか”、などを各所へ指示する中継のメインとなるディレクターです。

現場のフロアディレクター(以下、FD)

FDは現場には2人います。まずは、球場の放送席で、解説者や実況アナウンサーの横で番組の進行の補助を行います。中継車Dにはカメラで映っているところの情報しか入ってこないので、その他の球場の情報などを中継車Dやカメラさんなどに伝える役割もあります。
もう1人は他球場の情報や、選手交代が行われそうだということを本社にいるDや中継車Dに伝えたり、ヒーローインタビューの際に球団の広報さんとやり取りをして、選手をアテンドしたり、という仕事があります。

本社ディレクター(以下、本社D)

本社にも常に2人待機しています。基本的にみなさんが中継で目にする字幕スーパー(選手の成績やプロフィール、現在のスコアなど)を、誤りが無いかを確認しながら映像に載せています。中継がいつ終わるのか、などをマスターという部署に連絡することも仕事の一つです。

このようなことを行っています。配属されてからは、はじめは本社Dを行い、その後現場のFD業務を学び、何年か修行をした上で中継車Dの業務に就くことができます。試合ごとに様々な役割をスポーツ部員でローテーションしながら中継を行っています。

スポーツ部に配属されてから中継までの間に覚えないといけないことがありました。それが「スコアブック」の書き方でした。次回は「サンテレビのスコアブックについて」を書かせていただきます。お楽しみに!

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