みなさんがご覧になっている野球中継は何台のカメラで撮られているのか、考えたことはありますでしょうか?放送局によってカメラ台数は異なりますが、サンテレビの甲子園球場での野球中継では、7台の有人カメラと1台のリモートカメラで試合を追っています。多いと思いますか?少ないと思いますか?
私がこの台数で撮られているんだよ、と教わったときには「少なっ!」と思いました。なぜかと言うと、私自身いつも中継を見ていると、多くの選手がベンチ裏にいてもグラウンドのどこにいても映っていますし、お客さんの様子まで撮られているので、それだけの動きをフォローするためには十数台のカメラが必要なのでは、と思ったからです。プロのカメラマンさんの観察眼やディレクターの指示は本当に的確なんだな、と手前味噌ではありますが印象に残っています。
【①カメ】
・打者への投球をとらえるメインカメラです。ピッチャー(P)と、キャッチャー(C)が映っている、「PC」と呼ばれる画角が基本サイズです。昔はキャッチャーのサインが映ってしまう!ということで許可されていませんでした。今では考えられないですね。
【②カメ】
・打球が飛ぶと、必ずこのカメラでフォローするので「球追いカメラ」と呼ばれています。走者や、守備位置を映す大事なカメラですので、ここはベテランやエースカメラマンが担当しています。
【③カメ・④カメ】
・それぞれベンチ横のカメラピットと呼ばれるところに位置しています。③カメでは、打席に立つ右打者をアップで撮影し、3塁走者や3塁側ベンチの選手も捉えます。逆に④カメでは、左打者のアップと、1塁側のベンチなどを撮ります。③カメ・④カメともに息を合わせて動き回って、応援する観客の様子など様々な場面を映します。
【⑤カメ】
・投手の様子を正面から捉えます。投球フォームの話になったときなどは⑤カメのVTRが大活躍します。抑えたときや打たれたときの表情なども、⑤カメは非常に有効です。
【⑥カメ】
・三塁とホームベースを結ぶ三本間のラインの延長線上にあるため、迫力あるホームインを映すことができます。これはサンテレビの独自のカメラ位置です。タイガースが勝利した後の監督インタビューには⑥カメのカメラマンさんが移動して撮影するため、タイガースがリードしているときの試合終盤にはここは無人になります。
【⑦カメ】
・逆方向から打球をフォローして、打球のスタンドインや、バックホームまでをワンカットで捉えることができるため、「ホームランカメラ」と呼ばれています。過去にタイガースには掛布選手やバース選手のような、左の強打者がいましたので、そのスイングをきれいに映すことができるようにライトスタンドに置かれた、という経緯があるそうです。⑦カメの目の前にはライトスタンドの大応援団も見えます。
【⑧カメ】
・銀傘の上から打席に入る打者や、バントに対する内野手の動き、盗塁する走者など、スタンドからは観られないシーンを映します。これは中継車でリモートコントロールされています。
以上がサンテレビボックス席の甲子園球場でのカメラ位置です。カメラマンさんなど技術スタッフは、中継が終わってから機材の撤収に取り掛かります。きれいに梱包し、中継車などに積むため、1~2時間ほど撤収にはかかります。13時に球場入りしてからおよそ23時ごろまでの作業となる大変なお仕事ですが、中継に関わるスタッフの方々の表情はやる気に満ちあふれています。今後、このコラムではカメラマンだけでなく、音声やVE、VTR、設営のスタッフなど技術スタッフさんのお話なども紹介できればと思います。
さて、私がスポーツ部に赴任して3年目の6月、いよいよ野球中継での中継車Dのデビュー戦が決まりました。甲子園球場での福岡ソフトバンクホークス戦です。大緊張で迎えたこの試合、私はどういう気持ちで迎えたのか、実際にどのような流れで中継が行われているのかを次回書かせていただきます。お楽しみに!