「パーパラパッパッパッパッパッパラパッパッパ♪」
というスポーツテーマがかかるといよいよ『サンテレビボックス席』の中継が始まります。30秒はテーマ曲がかかり、その間は対戦スーパーや、提供社様のスーパーが出されていますので、実況アナウンサーはしゃべりません。この間にプレーが始まるときもありますし、まだ始球式などが行われているときもあります。30秒を過ぎると実況アナウンサーがしゃべりだします。(アナQと呼ばれます)
フロアディレクター(FD)は、そのアナQの時間管理を行い、あとは中継車Dの映す映像などに従い、先発投手の紹介などに移ります。そのあとは基本的に一人目の打者が打ち終わったあとに、両チームのスタメン紹介を行います。
基本的には試合や中継車からの映像、実況アナウンサーと解説者のコメントに従って中継は進んでいきます。そこでFDがしなければいけないことは、現場の状況を伝えるということです。例えば、中継車では、7台のカメラが撮った映像は見えていますが、逆に言うとそれ以外の状況は見えていません。屋外での球場で言うと、風向きなどはその都度カメラさんに頼っているわけにはいかないので、FDからの声が必要なのです。ひとつ例を見てみましょう。
「なんでこのタイミングで急にバックスクリーン上の旗のようすが映るんだろう?」
そう思われる方々は多いと思います。
甲子園球場でのカープとの一戦。4番の鈴木誠也選手が打席に立とうとしています。一発のある鈴木選手のバッティングで気になるのは今の風向きです。甲子園球場でいつも通りの強い浜風(ライトからレフト方向への風)が吹いていると、右打者の鈴木選手の一発に注意が必要だ、という情報を視聴者の方々に伝えることができます。もし普段とは逆方向の風が吹いていると、今日はタイガースの左打者でもライトスタンドへのホームランを期待できるな、ということを伝えられるのです。
一発のあるバッターが出てきたときや、いつもとは違う風向きだな、いつもより強い風が吹いているな、というときにFDから声掛けをします。すると、カメラマンさんがバックスクリーンの上の旗を撮って風向きが映像で視聴者の方々へ伝わります。中継スタッフは基本的には試合を追いかけていますので、そうしたFDからの一言はとても重要です。
同じく中継車Dがプレー中にはチェックしづらい、ネクストバッターズサークルにいる代打のチェックもします。先発投手が6回を超えて打席に回ってくるときなどは、まだ続投するかどうか、とても気になるところなのでそちら側にも注意をしないといけません。
放送席の位置からネクストバッターズサークルが見えにくい球場もあります…。どことは言いませんが、その場合は身体を必死にねじらせたり、どんな体制でも見えない場合はカメラさんにサポートしていただいたりしています。ちなみに甲子園球場はとても見やすい球場です。
同様に注目しなければいけないのは、守備隊形です。ランナーが得点圏にいるとき、外野は前進守備をしているのか、内野はゲッツーシフトか、バックホーム用の前進シフトか、などチェックをし、中継車Dやカメラさんに伝える必要があります。そこで映った映像を見て、実況アナウンサーがコメントをつけてくれます。
FDの自分が中継車Dにシフトを伝える前に、実況アナウンサーや解説者の方が「外野が前に来ていますね。」と言われてしまった(?)ときは、密かに「先を越されてしまった!」と悔しさを感じていることは内緒です…。
FDの主な仕事の一つ「時間管理」ですが、冒頭に記したようなアナQのタイミング管理のほかには、CMに入るべきときに、実況アナウンサーに気持ちよく締めてもらうタイミングで合図を出す、など様々あります。既にお伝えしていますとおり、「ネット局」があると時間管理はとても複雑になります。そのあたりの仕事内容のご紹介は次回書かせていただきます。お楽しみに!