「5秒前、4、3…」
阪神甲子園球場のバックネット裏の観客席の中に設けられた放送席を目にされた方も多いと思いますが、その放送席で実況のアナウンサーと解説者の方の隣にたまに立って指折りカウントをしているのがフロアディレクター(以下、FD)です。
そもそも何をカウントしているのでしょうか?
お察しのとおり、CMが明けて実況アナウンサーが話し出すまでの時間のカウントが主です。実況アナウンサーは、FDの合図(キュー)を頼りに話し出しますので責任重大です。ちなみにその他には番組が終了するまでのカウント、また、サンテレビ以外の中継ネット局が試合の途中に始まったり、終わったりする場合のカウントなどです。このネット局が多いときがFDにとっては身の引き締まる瞬間で―。というのはまた追って…。
スポーツ部に配属されて、本社Dとしての勤務を数試合行い、いよいよFDとしての勤務です。私が初めてFD業務を行ったのはナゴヤドームでのドラゴンズ戦でした。初めての遠征、初めての現場での試合、初めてお会いする福本豊さん…。色々と慣れない中でも先輩ディレクターが色々と当日の流れを教えて下さいました。
「現場にはフロアセットを持っていくんやで。」
フロアセット?なんのことでしょうか?
当日中継を行ううえで必要な書類などが入った大きな封筒です。
中継の当日までに担当の中継車Dが色々と封筒に書類を用意し、それをFDが持っていくわけです。
どのような書類があるのでしょうか?
一番重要なものは「キューシート」というものです。キューシートに書かれているのは主に以下のようなものです。
・どのタイミングでCMに入るか
・どこでVTRを出すか
・いつ現場の音声を使用するか
・どのタイミングで字幕スーパーが出るか
・当日の解説者と実況アナウンサーは
などです。台本よりはざっくりとしたものですが、これが当日のディレクターやアナウンサー、技術スタッフさん、サンテレビの中継をネットして下さる局の指針となるのです。
他には当日の試合の約40分前に発表されるスタメンやベンチ入りメンバーを記入する「メンバー表」や、中継のなかでご紹介する他球場速報用の記入シート、『ボックス席』ではおなじみの「テレホンプレゼント」の原稿など様々なものがあります。
ちなみに、「メンバー表」は発表され次第、FDやスタッフが手書きで書いています!メンバー発表から中継のスタンバイまで20分ほどしかありません。中継に向けたスタッフがスタンバイするまでの間に素早く、読みやすく書かないといけません!意外とアナログですね。
現場にフロアセットを持っていき、球場へ着いたのは試合開始4時間前。そこでディレクターの先輩から言われたのは、
「球場に着いたらFDバッグを中継車から放送席に持っていくんやで!」
FDバッグ?なんのことでしょうか?
この中にもFD業務に必要なものがたくさん入っているのですが、もうけっこうな分量になってしまいました…。
というわけで、次回は「FDバッグには何が入ってるの?」を書かせていただきます。裏の話が多すぎてこんな調子でいつになったらこのコラムで中継の話を書きだすのでしょうか…?それも含めてお楽しみに!