第8回 サンテレビボックス席ディレクターの裏側は?⑥ ~フロアディレクターのお仕事 その2~

中継当日、現場に到着し、まずフロアディレクター(FD)がしなければならないことは、「FDバッグ」を中継車から放送席へ持っていくことです。
「FDバッグ」とは何か?というのが写真の何の変哲もないスーツケースです。

大きいほうは甲子園・ナゴヤドーム・マツダスタジアムなどで使い、赤の小さいほうは横浜スタジアム・神宮球場で使用します。入っているものは同じです。

このFDバッグには中継で必要なものがたくさん入っています。写真に写っているのはそのごく一部です。

まずは球団から配布される「メディアガイド」というものがあります。この中には、選手のプロフィールや過去の成績はもちろん、
・プロ初安打を打ったのはいつか?
・プロ初勝利を挙げたのはいつ?
・前年の対戦カード別や対戦打者(投手)別の成績
・歴代背番号一覧
・球団のあゆみ

など、通常我々が手にする選手名鑑よりも詳細な内容が書かれています。特にデータ面などは大変充実しています。(好きな女優や愛車などは書かれていませんが…)
球団が自ら出しているものですので、実況アナウンサーやディレクター、スポーツ新聞の記者さんは、メディアガイドを頼りに過去の記録などを使用しています。
他にはセ・リーグ発行の「グリーンブック」や、「野球規則」などの本が入っています。
「野球規則」は細かいルールがぎっしりと書かれています。一年に一度は「ルールの盲点」をついたようなプレーが出ることがあります。そのときにすぐにアナウンサーや中継スタッフが気づくことのできるよう、この本はとても重要なのですが、内容はとても複雑です…。ただ、読んでいると道具の規定や塁間の詳しい距離など、「なるほど!」と思うことが盛りだくさんです。

次にご紹介するのは「双眼鏡」です。
「双眼鏡なんて要るの?」と思われるかもしれませんが、これがけっこう役に立ちます。
ネクストバッターズサークルに代打の選手が出てきたときに、いち早く中継車Dに伝える必要があるのですが、放送席から距離が遠く、肉眼では見分けがつきにくいときがあります。そのときに双眼鏡を遣えば、背番号もくっきり!誰が代打に出るのかをすぐに伝えることができます。

ほかには「30秒前」など時間が書かれたシート。FDのすぐ隣に実況アナウンサーがいるので、これも必要ないのではと思われる方もいると思います。ですが、甲子園球場の放送席は観客席の中にありますので、ファンの大声援で肉声はあまり届きません。シートを見せることできちんとコミュニケーションができますし、さらに離れたところに座っている解説者の方にも「そろそろCMが明けますのでスタンバイをお願いします!」という意思表示にもなります。
放送終了時にも「30秒前」と書かれたシートを見せます。その際はオンエア中ですので、実況の隣のディレクターが大声で「30秒前!」と言ってしまうと、みなさんの見ている中継にディレクターの声が入ってしまいます。ですので、観客席と仕切られている他球場の放送席でもこれらのシートは使われます。同様に「CMへ」のシートを見せることで「そろそろCMに入るのでまとめてくださいね。」ということを伝えられます。

そのほかにも、ハイライトVTRで出されるシーンを記入するシート、メモや筆記具、さらにはゴミ袋や暑い時期に出演者の飲まれるお水を入れる簡易のクーラーボックスなど色々入っています。ドラえもんの4次元ポケットのようですね。

それらを用意し、中継2時間前に行われる制作・技術スタッフ打ち合わせ(今後書かせていただきます!)と、解説者の方との打ち合わせを終え、いよいよ本番へ!初めてのFD業務が始まります。次回は「試合中のFDの動きは?」ということを書かせていただきます。お楽しみに!

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