〈4/2 阪神 3-6 中日(京セラドーム)〉
勝:鈴木
S:祖父江
敗:加治屋
それは、6回表に訪れた。
二死1塁。ドラゴンズの代打は、福留。
名前がコールされると、スタンドから拍手が起こった。
藤浪 対 福留
まさか、こんな対戦を見る日が来るとは、半年前にはまだ夢にも思ってなかった。
バッターボックスの福留さんは、少し長めに足元を整え、なかなか顔を上げてくれなかった。青いヘルメットのつばが、福留さんの表情を隠す。
けれど、少し見えた口元が柔らかかった。
一方の藤浪は、真剣そのもの。
大切なことを真正面から向き合って藤浪に教えてくれた恩師だ。退団後は、対戦したいピッチャーに迷いなく藤浪の名をあげた。
速球を投げ込む藤浪に対し、福留さんは1球目から強振。
力と力の対戦は、瞬きすることすらもったいないくらい。
2ストライクに追い込んでから、変化球がわずかに逸れた。藤浪が苦笑い。
藤浪-梅野は、3球で仕留めようとしていたのか…
福留さんの読みはどうだったんだろう。
ボールカウントが、2-2となって、5球目。
福留さんの膝元近くの内角低め、梅野が構えたミットに投げ込んだ。
この日最速の158キロのストレート。
その球威に足を動かされてしまった福留さんからバットが出るわけがなかった。
渾身の1球だった。
三振だった福留さんが、納得の表情で頷いていた。
泣きそうになっちったよ。
これぞ名勝負。
いいピッチャーといいバッターの作り出す空気と、全力の対決。
すごいの見た。
そのあと、藤浪の勝ち星は消えてしまったが、打たれたピッチャーを藤浪は、声をかけ拍手してベンチに迎えた。
いいピッチャーになったな。
[今日のマルテ]
ベンチへ戻ったマルテが、まるっきり福留さんと同じ表情してた。二人のことを知ってる。一番いいところからあの名勝負見たんだもんな。