2020年01月16日(木曜日) 11:03 地域・まち

【特集】阪神淡路大震災から25年 再開発事業で新長田は

阪神淡路大震災で火災に見舞われその後、大規模な再開発事業が行われた神戸市長田区。

そこで震災当時も今も商売をする男性を取材しました。

 

神戸市長田区。JR新長田駅の南側に建てられ、約280の飲食店や小売店などが入る

再開発ビル「アスタくにづか」。

守正晃さんは、アスタくにづか1番館と3番館の地下1階で豆腐の製造販売店を子や孫など3世代で営みます。

震災当時店を構えていたのが、かつて大きな道を挟み続いていた西神戸センター街。

西側の約100メートルにおよそ30の店がところ狭しと並び賑わいを見せていました。

しかし、長田区は阪神淡路大震災で大火災に見舞われ、52万4000平方メートルが焼失。守さんの店舗兼住宅も全焼しました。

「家は無事やったんや、つぶれてなかったから。火が回ってきた。これだけはどうしようもない。昼前からちょっとずつ燃えていたんやけれど、夕方の3時4時くらいになってあっちこっち火が上がっていた、そういう状態。」「あの商店街がずっと同じ幅できてるわけや」

西神戸センター街で酒店を営んでいた松岡武彦さん。

「うちがあった所は再開発の話があったときこの入り口がうちになるんやなと」

神戸市は震災から2カ月後に都市計画を決定。JR新長田駅の南側に位置する約20.1ヘクタールで始まった事業費約2710億円に及ぶ全国最大規模の再開発事業は、神戸市が強制的に土地を買い取る第二種市街地再開発事業として進められました。

守さんの店などがあった西神戸センター街も再開発の対象になり、商店主は土地を神戸市に売り再開発後の区画を買い戻すかこの地区を出ていくかの選択を迫られました。

西神戸センター街でお好み焼き店を営んでいた河野通和さん。

「5年は頑張ったんですけれどだんだん人通りがおらんくなって商売上どうしても無理ということで(垂水に)転出を考えました。」

西神戸センター街で酒店を営んでいた松岡武彦さん。

「大型再開発は全部いっぺんに立ち上がれるわけない。順番にしていかなければいかん。再開発の話ができたときにもそれから交渉して、入るか出るかも悩んだし、出るまでの7年間はものすごい苦労やったね。」

町への愛着となじみ客の大切さを訴える商店主たち。

震災後の苦労を抱えつつも今はJR新長田駅近くで店を続けています。

守さんは震災後プレハブを建てて同じ場所で約4年間店を続け、その後、神戸市西区や東灘区などを転々としました。

そして2003年、アスタくにづか3番館のオープンに合わせて再び新長田に店を構えました。

守さん「長田へ、やっぱり元の位置に戻りたいというのは常に思ってたな。まちがどうなっても地元で何十年やっていたら『守さん』って声を掛けてくれる人が多いから帰ってきたいなというのがはずっと思ってた」

しかし、待っていたのはかつてのにぎわいを取り戻せない商店街。

特に深刻なのが、人通りが少なくなる国道2号から南側のエリアです。

兵庫県や神戸市は人の流れを生み出そうと去年6月、国道2号の南に新長田合同庁舎を建設。

再開発事業を巡っては国道2号沿いの区画で病院と分譲マンションの複合施設が建設される計画が発表されたことで、神戸市が用地を買い上げて再開発ビルを建設してきた44棟の建設の見通しが立ちました。

さらに神戸市は来月の都市計画審議会で土地買収が進まない残る1区画を再開発事業の対象から外す方針で、震災から25年経ちようやく行政主導の再開発が完了することになります。

職員約1050人が働き始めた新長田合同庁舎。庁舎に程近い西神戸センター街では、一昨年から去年にかけて飲食店などが相次いでオープンし、合同庁舎では商店街が作ったランチマップを職員に配るなど、積極的に町に出るよう働きかけています。

合同庁舎の職員「まちの中で面白そうなお店とかおいしそうなお店を探しながら歩いてますね。お昼は時間が限られてますので、夜のほうが多いですね。」「基本的には外で食べています。インスタグラムで新長田さがしてランチっていうハッシュタグをつけて皆さん投稿されているんですね。その情報を見ながらメニューとか見ながら探しています」

できたての豆腐を食べてもらおうと「豆富どころ もりとみ」を開く守さん。

合同庁舎ができてから、職員が食事をとりに来ることもあるといいます。客足が伸びる夕方、なじみ客の中には職員の姿も。

合同庁舎の職員「庁舎から帰ってきました。帰りのおかずを少し買って帰ったりします。ここの揚げ出し豆腐が絶品なんですよ。」

守さん「売り上げはそんなに目に見えて大きく変動はないけれど、3人来たり5人来たり10人来たり徐々には増えてきている。今の延長でお客さんが来られるように個人個人が精いっぱいやっていって、1軒1軒が力を蓄えていったらお客さんもやっぱり魅力はあると思う。」

合同庁舎完成で人通りが増えた再開発エリア。以前のにぎわいを取り戻せるのか商店主たちの取り組みは続きます。

 

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