今年6月。神戸市内のホテルで あるプロジェクトが始まりました。
日本酒の材料となる高級米・山田錦を使って
フレンチと鉄板焼きのシェフがスペシャルメニューを考案するというものです。
山田錦は兵庫県が生産量日本一を誇る、日本を代表する酒米。
大粒の米の中心には、白い心白(しんぱく)と呼ばれる成分が多く含まれ
これがすっきりとした味わいの日本酒を生み出します。
では「食べる」と山田錦はどんな味なのでしょうか?食料品店で聞いてみました。
「山田錦、酒米全般ありません。
食べると食用に比べて劣る。淡泊。ほとんど流通していない」
戦前には一部の農家で食べられていたという山田錦。
高価であることに加え、戦時中から(昭和17年から平成7年)およそ50年間
食用としての販売が(法律で)禁じられ、食べる習慣自体がなくなっていきました…。
そこで「酒米をご飯にして食べる」という新しい考え方を発信しようと
米を販売する業者の組合「兵庫フード」が兵庫県中小企業団体中央会や生産者、
ホテルラスイートの協力を得て今回のプロジェクトに取り組みます。
「組合 期待」
シェフ「意気込み」
このプロジェクト立ち上げの背景には、ある危機感がありました。
三木市吉川町。
夏場の激しい寒暖差や、豊富な養分を含む土壌など、様々な条件に恵まれたこの土地は古くから最高級の酒米を生み出してきました。
しかし近年日本酒離れによって醸造量が減少。
一部の酒米が余るという現象が起こっています。
それだけに組合の代表、谷郷さんのプロジェクトに対する期待も大きいようです。
10月。
オープン前の厨房でフレンチの小笠原シェフが新メニューに向けての準備を進めていました。
プロジェクトが始まって5か月。
実際に米作りの現場にも足を運び、淡泊で水分を多く含む山田錦をどう使うか試行錯誤を繰り返してきました。
一方、鉄板焼の木下シェフ。
幅広い年齢層に食べてもらえるメニューを目指します。
「生産者さんの期待に応えたい…」
スペシャルメニューお披露目の日。
それぞれが緊張した面持ちで会場入りします。
まずはフレンチ小笠原シェフ。
〇玄米を揚げたスープ 酒米独特の香りが活かされました。
〇太刀魚と丹波栗のおにぎりロール
そして
〇ロールキャベツ。ミンチの中に山田錦が使われています。
続いて鉄板焼き木下シェフ。
〇ライスバーガー には地元産の和牛ばら肉と野菜を挟み込みました。
〇蒸し寿司。温かい酢飯の上に海鮮が並ぶ
木下シェフ 「いい素材に会えた」
小笠原シェフ(フレンチ)「納得できるものが出来た。メニュー化目指したい」
これまでとは違う魅力が引き出された山田錦。
私たちが新しいスタイルで楽しむ日も近いかもしれません。