グルメ

金魚に河童で 焼酎の夏、日本の夏

 

文:大西昭彦

 

「人気は金魚と河童かな。カウボーイもあるけど……」

 

 「なにそれ?」とゲイのママにたずねたら、「ま、早くいえば酎(チュー) ハイ」のことらしい。

 

そういえば、金魚というのは聞いたことがある。河童は寿司から連想すれば、おおよその見当はつきそうだが、試したことはない。

 

ましてやカウボーイになると、まったくわからない。

 

「じゃ、とりあえず金魚つくったげる」ということで、焼酎水割りに大葉と赤唐辛子を浮かべたものがでてきた。グラスを水槽に見立て、そのなかで水草がゆれ、赤い金魚が泳いでいる。聞いてはいたけれど、間近に見るとなかなか清涼感がある。

 

河童は想像どおりで、キュウリを浮かべたものだという。これも涼しそうで、夏場に人気なのはわかる。

 

そもそもカクテルというのはウォッカや焼酎といった蒸留酒をベースに、ほかのアルコールや果汁などを加えて、炭酸で割ったものをいう。これにそって言えば、金魚も河童も、要はただの水割りだ。

 

そこでカウボーイ、となる。カクテルっぽいものには詳しくなくて、アルコールに牛乳と言われてもぴんとこないが、コーヒーリキュールにミルクを混ぜたカルーアミルクは知っている。これと似て、カウボーイはウイスキーにミルクを混ぜたものをいう。

 

好みで、黒糖やシロップなどを加える。牛を扱うことから、ちょっと洒落をきかせて「牧童」とネ-ミングをしたわけだ。本来はウイスキーをベースとしているが、焼酎をミルクで割ってもいいらしい。これには香りが強くて甘みのある芋焼酎などがあう。焼酎カウボーイである。

 

焼酎は、大衆化に成功してずいぶん身近なアルコールになった。マーケティングっぽくいうと、コモディティ化が進んだことになる。背景には、居酒屋チェーンの拡大に加えて、焼酎独特の香りを減らしてクセを和らげるなど、メーカー側の工夫があった。

 

ところが、こうした焼酎ブームがピークアウトして、そろそろ10年がたつ。2014年3月の消費増税前の駆け込み需要を除けば、本格焼酎も甲類焼酎も微減傾向が続いているというのが現状だ。大手の価格競争の激しさが増すなか、中小の蔵元は赤字に転じるところもある。

 

このままでは業界自体の弱体化につながるという危機感があって、いろいろ知恵をしぼっているそうだ。新しい市場を開拓するにはどうすればいいのか。

 

ひとつのヒントは清酒にある。若者のアルコール離れが進むなか、清酒は味に特徴をもたせるなど、苦心しながら高級化路線を切り開いた。焼酎はコモディティ化という成功によって、それがいっぽうで足かせになった。おそらく業界もそれはわかっている。そこで、クセのある香りづけという原点回帰路線が模索されている。

 

懐かしさ漂う金魚や河童もひとつのアイデアだろう。焼酎の夏、日本の夏となるか。

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