藤浪にウイニングボールを。全員で繋いだ完封リレー。

〈6/15 楽天 0-4 阪神 (楽天生命パーク)〉

:藤浪
:辛島

仙台は。左の辛島にタイガースは福留・鳥谷を休ませたオーダー。マテオと、高熱のためドリスまで欠けたブルペン。
藤浪にとって最善とは言い難い状況ではあったが、この球場は藤浪の味方だった。苦手だという不安要素がないのは大きかったはず。
前回約1ヵ月半ぶりとなったメットライフでの登板から、中11日でのマウンド。

少し多めに吸った空気をふっと吐きだす。1球投げるごとにリセットした。
ボールは走っていた。その指には確かな感触があったのだろう。
梅野のミットにも迷う様子はなかった。

解説の福本さんが言う。
「荒れなかったらOK。コントロールはそこそこでいい。」
大ざっぱに聴こえる人もいるかもしれないが、これこそ藤浪の長所と、心構えとして大切なことを表現されたと感じた。

四隅を突くピッチングはできないかもしれない。けれど力でねじ伏せるだけのボールを投げることができる。
マウンドに立つ藤浪がひと際大きく見えた。
今日藤浪は、ファンが観たい「藤浪のピッチング」をしていた。

対する辛島も素晴らしいピッチングをしていて、意外にも投手戦となった。
貧打にあえぐ両チームの状況が浮き彫り、ともいえるのだけども…

0-0のまま6回表。
悔やまれる辛島、失投だった。だが振り切った中谷がえらい。
レフトを守るディクソンも追うことはしなかった。
行った!入った!
なんてなんて嬉しいホームランだったか。

試合前に、右の大砲にまで一生懸命バントの練習をさせるチームだ。
この日も何度「セーフティバント」の失敗を見ただろうか。
こんな野球をしていて点がとれるかって、マウンドの藤浪を不憫にさえ思った。
だから、中谷がえらい。
あのボールを打てなきゃ藤浪は勝てないし、野手はまた揃ってバントの練習だ。

そして糸原がずっといい。中谷のホームランの前に先頭四球で出塁したのも、7回表に走者を置いてタイムリー打つのも、9回表に先頭バッターとして2ベース打って、俊介のタイムリーで還ってくるのも、ずっと、全部、いい。
糸原がいなけりゃこの日の得点は、中谷の「ソロ」ホームランだけだったのかもしれないのだから、新聞はもうちょっと糸原を書くべきだ。でもそんな糸原が好きだ。あまりにも「普通」に活躍しているのがいい。派手なアピールできるタイプではないけどそれも含めて糸原が絶対的にいい。
そしていいことといえば、糸井と海の盗塁合戦の様相もいい(笑)

7回裏。
藤浪は、右のアマダーに四球を与えた。この日ここまで2つの四球は荒れ球ではなかったが、この3つ目の四球は、ベンチに警鐘を鳴らした荒れ球だった。
次の茂木にヒットを打たれたところで、金本監督が交代を告げた。
もう少し早くても良かったが好判断だった。

マウンドに上がったのは岩崎。岩崎の多投が気になるとはいえ、ここで使わずにどうする。
岩崎は藤田をセンターフライに。そして代打今江が出てきたところで桑原に。
丁寧な継投だった。
桑原は満塁のピンチとなったが、嶋をセンターフライに打ち取って、藤浪が降りた7回をゼロに抑えた。

そして、マテオとドリスがいない中、この人がいて良かった…能見さん。
3ボールからヒットにされたところでスイッチオン。最初からいってもいいんやで?(笑)
1番の打順から始まったこの重要なイニングにもゼロを刻んで、マウンドを降りた。険しい表情だった。そう、藤浪に勝ちを。まだ試合は終わっていない。

そして9回は球児。
また雨が強くなった。
けれどそんなものはまるで関係ないかのよう。淡々と投げてた。
藤浪に勝ちをつけてやらなきゃ、そんな気負いすら感じさせなかった。
抑えたとてセーブはつかない。けれど当たり前に投げてみせたのは、球児なりの、藤浪への配慮に感じた。

こうして、やっと、やっと、藤浪の手にウイニングボールが渡った。
藤浪が勝った。
最後に勝利投手になったのは昨年5月4日のこと。
本当に長かった。
ファンも待ったが、藤浪自身にはどれほど長かったことだろう。
心無い声も耳に入ったことだろう。
助言すらも藤浪を苦しめたことがあったかもしれない。

けれど、藤浪の周りには藤浪を応援する人がたくさんいて、藤浪のために勝ってやろうって守ってくれた仲間がいた。
なんでなんだろうな。
藤浪が壊してしまった試合もたくさんあったのにな。
なんでなんだろうな。
藤浪が勝ったらこんなに泣けるのってな。

復活という言葉をまだ使うには早いのかもしれない。
だけど、この一勝が藤浪にとって、なんでもない一勝であるわけがない。

藤浪は言った。
「自分の力で恩を返せるように。」
「これからしっかり勝っていけるように、チームに助けてもらうんじゃなくて、チームを助けられるように一生懸命頑張りたい」

出た!生意気!(笑)
余韻に浸ってたのに!もう「次」に向いてるなんてな!置いてくな!(笑)

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