藤浪のための試合。

〈4/13 阪神 2-3 ヤクルト (甲子園)〉

:カラシティー
:石山
:ドリス

2回表だった。
先頭川端に、浮いたストレートを綺麗に打ち返された。
続く西浦は、バントの構えだったが真っ直ぐに絞っていたのだろう、初球振り抜いて三遊間抜けるヒット。
三塁側ベンチの思惑に揺さぶられるマウンド上藤浪。
1,2塁から坂口にこれも初球からストレートを狙われ、タイムリーに。
まだ無死1,2塁。
中村には力が入りストライクとれず満塁。
ここで香田コーチがマウンドへ向かう。
次はピッチャーだ、まずアウトひとつとろう。そういう指示だったか。
言われなくたってわかってることだ。
だが、それをきちんと受け止められたか、腹に落とせたか。
良かった頃の藤浪の悪かったところは、どこかうわべで聞いていたところ。
守る野手だってお前わかってんのかと言いたかったはずだし、実際、福留には叱られたこともあった。

この日の藤浪は一つ一つ頷いて、みんなが戻ると、息を吸いそしてスゥーッと吐いた。
そうだ、藤浪落ち着いて。

ブキャナンへの1球目。際どいところだったがボール。
藤浪の表情が少し柔らかくなった。
そして2球目。バッティングも好きだというブキャナンはピッチャーゴロ。
弾んだ打球は、長い腕を伸ばした藤浪のグラブに入ってる!
自分の感覚にはなかったのか見上げたその先のグラブに白いボールがあった。藤浪、しっかり投げて!
「悪送球でランナー生還オールセーフ」なんていう悪夢がよぎったファンは少なからずいたはず。私もそれが怖かった。
だけど、今日の藤浪は違った。藤浪から梅野へ、そして梅野からロサリオへ。1-2-3ダブルプレー!
あかん!泣いてまう!(笑)
このプレーがどれほど大きかったか。
グラブに入ったのはたまたま。だけどこれは神様から与えられたチャンスであり試練だったんじゃないか。このプレーは大きな分かれ道だったんじゃないかと。大げさ?
ロサリオが藤浪に笑いかける。藤浪も、入ってたわ!と笑う。
そして、山田のバットに空を切らせて長かったこのイニングを1点だけで乗り切った。

腕を伸ばしてフォームを確認しながら投げた。
ベンチでも声を出した。
ピンチらしいピンチは6回にもあったが、そこもダブルプレーで切り抜けるとグラブを叩いて吠えた。
感情がそのまま表情に出る人だ。
少なくとも今日はずっといい顔をしてた。
だめだったら二軍だと言い渡されていたというが、…ちょっと待ってこれ、今から投げるピッチャーにかける言葉ですか、思い切り腕振ってこいじゃないんですか…だけど藤浪「だめでも練習すればいい」と、甲子園のマウンドを楽しむように7回を投げた。
勝ち負けは関係なかった。

ブキャナンの前に打線は全く打てない。チームは負けている。だから満足なんてしてないけど、ただただ嬉しかった。藤浪は次が大事だって?そんな心配今はまだいいや。

で、福留だ。
昨日のカープ戦も今日も、打ってほしいところでゲッツーに終わったりのノーヒット。
ブキャナンに完封負けするその直前。

っっっったぁぁぁあああああ!!!!!
わぁぁあああああああああ!!!!!

ライトスタンドに消えた!!
藤浪の負けも消えた!!

日米通算300号!?
ややややや…なにこの人怖い!!!!

おめでとうなんて恐れ多くて言えない。ただもう、凄い!!

…で、勝ったふうで終わろう。
なんたって、今日はいい日。

[今日のロサリオ]

その福留のホームランの前。
ロサリオの打球は、投げ終わりのブキャナンのお尻を直撃。
トレーナーさんやコーチが飛び出してきたのを、ブキャナンは「来るな、構わないでくれ」とちょっとプリプリ。お尻だけに。…はっ…!これ!

…って退場になるようなことはなかった。ブキャナンもいいピッチャーだ。

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