「『奪』から『頂』へ」

前回、コラムで記した滝川第二の好スタート。
2回戦も苦しみましたが、PKで山口・聖光を下して、3回戦へ。
岡山・作陽との大勝負を迎えます。

今年度のチームは、漢字一文字「奪」という言葉がテーマでした。
滝二では2002年度のチームから、毎年、漢字一文字をその年のテーマと決めています。
2002年度といえば、河本(ヴィッセル神戸)が2年生、岡崎(日本代表)が1年生でした。
最初は「一」。
“全国で一番になる”という思いが込められていました。
金崎(元名古屋)がいた2006年は「向」、全国制覇時は「志」
そして、11年目の今回は「奪」-。

「昨年取られた県のタイトルを奪い返すという意味」(太田主将)で始まったこのテーマも
選手権出場が決まると同時に、「今度は優勝旗を奪い返す」(太田)に変わっていました。

テーマを成し遂げるためにも大切な一戦でしたが、結果は2-5。
栫監督曰く、「完敗」の試合でした。

作陽の野村監督を何度か取材させていただきましたが、本当に研究熱心で、
滝二戦もキーマン⑦高畑をよくマークしていました。
滝二はどちらかというと、相手に合わせるより“滝二らしさ”を出して勝つという伝統があるので、
それがこの試合に関しては裏目に出てしまったかなと個人的には思っています。

ただ、後半アディショナルタイム、試合の行方が見えた中、1点をもぎとった姿勢。
これこそが、滝二の未来に必ずや、つながるでしょう。
栫監督はあの1点を見て、泣いていました。
主将の太田も、応援団への挨拶で
「後輩のみんなは、あの1点を見て感じて欲しい。俺達は決して強くなかったけど、
あれが、1年間やってきてみんなに伝えたかったことや」と涙ながらに話していました。

最後の1点を見て、私はあるシーンを思い出しました。
あれは80回大会2回戦、滝川第二VS静岡学園。
この試合、滝二は0-5で大敗しました。
本来なら0-6のゲームでした。

しかし、6点目は入りませんでした。正確に言えば、阻止しました。
誰もが6点目と思ったシーン。
無人のゴールへ吸い込まれていくボールに最後、足を出して止めたのが
当時の黒田主将でした。
それを見ていた応援席の1・2年生は、
「5点差になってもあきらめない姿勢はすごかった。6点目を阻止したシーンは絶対に忘れません」と
みんな口を揃えていました。
翌年、滝二は2度目の国立行きを決め、全国ベスト4まで勝ち上がりました。
そう、2002年度のチーム、漢字一文字テーマが始まったチームです。
今回も最後まであきらめない姿、それを結果に結びつけられる強さ、きっと、後輩に受け継がれていくでしょう。

神戸に帰ってきて、滝二は、すぐに新チームが始動。
作陽戦の後、下級生で一番泣いていた星野遼河選手が新主将に、
テーマは「頂」に決まったそうです。
まだ取材はしていませんが、おそらく
全国の“頂”点を目指すという意味からでしょう。

また一年、兵庫の高校サッカーが本当に楽しみです。

兵庫の高校サッカーが本当に楽しみ

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